「父親は見つからなかった」で終わると思い込んでいた
――スタジオで取材の様子をご覧になっていましたが、オファーされてからスタジオ収録までの間に、NHKから調査の進捗が伝えられることは? 取材は半年に及んだそうですが。
草刈 その間、僕はまったく知らされていないです。親父の顔もなにもかも、スタジオで初めて知ったんです。「おふくろは、バスの車掌をしていたのか。親父は、こんなことになっていたのか」とか。
自分としては、「結局、父親は見つからなかった」で終わるものだと思い込んでましたから。なおさら、あの展開には驚きましたね。
――お父様が見つからずに終わるものだと思っていただけに、スタジオでもはじめのうちは落ち着かれていたのでは。
草刈 多少はドキドキワクワクしてたんでしょうかね。ワクワクというか「どんなふうになっているんだろう」というのはありましたけど。
――「朝鮮戦争で戦死」「祖父は郵便局員」「ノースカロライナ州出身」といった限られた事前の情報をもとに、トーラ姓とトーラー姓の方々に連絡を取った結果、ノースカロライナ州グリーンズボロに住む74歳のジェイ・カラハムさんから「ロバート・トーラーは自分の叔父ではないか」という連絡が来ます。ジェイさんが登場された瞬間、どう思われました?
草刈 そんなに似てるとは思わなかったですけどね。
――ジェイさんの妻は、「(草刈さんの写真を見て)これは夫の親戚に違いないと思いました。あごの角度、目、耳の形。すべて夫にそっくりでした」と確信していたようですが。実際、DNA検査でジェイさんと草刈さんが97%の確率で従兄弟同士だと判明します。
草刈 似てましたかね?(笑)。放送が終わって、友達からも電話で「そっくりじゃないか」って言われましたけど。
――その後にジェイさんの母、ロバートさんの姉で、草刈さんの伯母にあたる97歳のジャニタ・カラハムさんも登場しましたけど、ジェイさん以上に目元が草刈さんと似ていました。
草刈 ジャニタさんにも似ていると言われました。僕はジェイさんもジャニタさんも、最初スタジオで見たときはピンとこなかったんですけどね。
――20代の軍服姿のロバートさんの写真が出てきたときは、どう見てもお父様だなと思いました。
草刈 友達は「あれは間違いようがないだろう」と言ってました(笑)。けれども、親父さんの写真を見ても「俺、こんな顔してるの?」って。「なんとなく似ているような気もするけど、違うよな」とか、番組でも言いましたけど「想像に近いと言えば近いかな」とか、いろいろとね。
――どんな容貌の方か、想像していましたか?
草刈 親父の想像ねぇ……。さっきの話の繰り返しになりますけど、「親父が生きていたら、大富豪の家の子だったかもしれない」とか「向こうへ行っていたら、裕福に暮らしていたんだろうな」とか、親父の顔よりもコスい想像ばっかりしていましたよ(笑)。