ネット記事だけには頼らない
──資料集めはどのようにされていたのでしょうか?
ドリヤス 事件に関する資料を読むと巻末に参考文献が出てくるので、それにあたる。すると、また参考資料が出てくる……という感じですね。一冊の本だけだと、偏りが出てくるので、なるべく多くの本にあたるようにしました。基本は当時の新聞と週刊誌ですね。たとえばあるエピソードでは、参考にした本とその引用元の新聞記事では、数字が違っていたなんて事がありました。
ネット記事もなるべく引用元の本にあたるようにしました。ウィキペディアの情報だけだと、すぐにバレますから。ネット上の百科事典の類には出てこない豆知識を意地でも入れるようにしました。
──事件現場には行かれましたか?
ドリヤス 事件現場自体の取材はしていません。なにしろ現場が当時のままには残っていない事件が大半ですから。現在どうなっているかを描くために「金大中事件」が起きたホテルグランドパレスを調べていたら、取り壊し中という記事が出てきたので、慌てて九段下まで出かけました。すでにホテルは閉鎖され、工事中の塀に囲われていましたが……。
「ロッキード事件」を紹介するときの導入部分にロッキード社製モノレールの話を入れようと、向ヶ丘遊園駅には行きました。「下山」の現場である荒川沿いにも行きました。記念碑はありましたが、いまは住宅地になっていて、当時の状況は想像もつかないほど変わってました。
──『昭和怪事件案内』は舞台が週刊誌編集部で、先輩記者の昭島和未が新人記者の小平とコンビを組んで、怪事件を取材します。小平は鉄道マニアという設定ですが、これはなぜですか?
ドリヤス 和未が事件の解説をし、小平は聞き役という設定なんですが、あまり何もないキャラだとつまらないと思ったんです。ただ聞いているだけじゃなく、たまには小平の方から説明する。突然、自分より詳しいやつが出てきたら驚くんじゃないか、と。
──和未の叔母として、小説家の昭島斗和子も登場します。
ドリヤス 最初は「美味しんぼ」のようなライバルキャラにしようと思ったんです。ただ、うまくライバルのポジションにならず……。結局、事件の説明をすると、そっちにスペースを取られてしまうんです。釣り漫画やグルメ漫画のようにキャラ同士のドラマを入れようと思ったんですが、事件の説明に終始してしまいました。