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事件への導入部がポイント

──事件の説明に持っていく導入部が毎回、凝っていました。

ドリヤス 最終回の「机『9』文字」で「話題のつなぎ方が下手だぞ」とネタにしましたが、無理矢理本題に持っていかざるをえないところが、この手の漫画ではあります。どういう取り上げ方をするか、どういう前フリにするか、毎回考えるところです。

「ロッキード」では、P3Cが飛んでいる場面にしようかと思いましたが、対潜哨戒機ですから海辺に行かないと飛んでいない。厚木基地まで行くと見えるらしいんです。そんな事を考えているうちに、向ヶ丘遊園のモノレールを思いついたので、そっちにしようと……。

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「よど号」は出版社の屋上から始まります。これは以前、文藝春秋を取材したときに屋上で写真を撮ったことがあったので、飛行機の話だし、ここでいいかなと。「あさま山荘」は1日中テレビに釘付けだったという話が有名なので、週刊誌の編集部にしました。きっと編集部ではみんなテレビを見ているんじゃないかと。

 良く出来たなと思うのは、「口裂け女」ですね。小平が資料を持って会議室に行くと、みんなマスクをしている。それまで作中ではコロナに触れてこなかったので「今になって着けるのは不自然じゃないですか」とメタ的に言う小平に、「空調が壊れているから」と和未が答える。そして編集長が「マスクといえば、子どもの頃、口裂け女が怖かった……」とつなげます。

 

──オススメの事件ありますか?

ドリヤス 「三億円」は8ページのわりにはうまくまとまった気がします。事件の顛末をうまくまとめられたと思います。ちゃんと書こうとすると、一冊の本になりますから。「下山」は字が多すぎて、もう少し絞れたかな、と反省しています。ただ、あの事件も背景がややこしいんですよね……。

──最後に、読者へのメッセージをお願いします。

ドリヤス  それぞれの怪事件への興味はもちろんですが、昭和史そのものにも関心を持ってもらえると嬉しいですね。漫画の中ではひとコマで済ませている出来事にも、複雑な事情が隠されている。特に昭和40年代は怪事件の宝庫。「よど号」(昭和45年)と「あさま山荘」(昭和47年)の間にも、学生運動に関する事件がたくさんありました。興味のある人はぜひ調べてみてください。

 どりやす・こうじょう

東京都出身。同人活動を行いながら2005年より漫画家として活動。主な作品に『有名すぎる文学作品をだいたい10ページくらいの漫画で読む。』シリーズ、『オモテナシ生徒会』、『異世界もう帰りたい』、『文豪春秋』などがある。

昭和怪事件案内

ドリヤス工場

文藝春秋

2024年1月23日 発売