「有働さんはヌードにならないんですか」
有働 『MeToo』運動に代表されるように今はセクハラの問題に対してすごく世の中全体が敏感になっていますよね。会社で「髪、切ったの」と上司が女性社員に言うだけでセクハラ扱いされてしまうような。
篠山 僕はただのカメラマンですから、世の中全体の流れについてどうこうしようという気はないんです。その中から時代を切り取るだけであって。ただ、そういう社会全体で言いにくい雰囲気があるなかを一点突破しようとして有働さんは『あさイチ』で「ああ、汗かいた」と脇汗の問題を提起して頑張ったんでしょう。そうやって風穴を開けていくのは重要だし、必要ですよ。
有働 なんだかそういわれるほうが恥ずかしくなってきます(笑)。
篠山 有働さんはヌードにはならないんですか?
有働 ええっ! 商品にはまずならないと思いますが。
篠山 そんなことは僕が考えることで、自分で考えることじゃない。
有働 でも、入ってほしくないところにシワが入っていたり。
篠山 そんなものは今、簡単に消せますから。
有働 消していいんですか? それ(ヌード)を残すことで自分が変わったり、誰かが変われるであろうか……。でも、ありですか? 49歳の女の……それは。
篠山 僕の親戚に今日、有働さんと対談すると話したら、「それって怪しいな。ヌードを撮りたいんじゃないの」って。その親戚は絶対に本人に言うなよと言ってましたが(笑)。
有働 うーん。07年から10年までニューヨーク勤務だった時に、イスラエル系のおじいちゃんのカメラマンと仲良くなりまして、アトリエによく遊びに行ってたんです。
篠山 それは撮られたでしょう、ニューヨークだったら。
有働 あるとき、私の写真を撮ってもらうことになって。ドレスで撮っても面白くないから、脱げと言われたんです。「いやー」と渋っていたら「誰も見てないし、お前にあげるためだけの写真なんだから」と言われて。それで1回脱いだんです。
篠山 やっぱり経験あるんだね。
有働 ただ、脱いだあと撮影する時になって、「その場でジャンプしてごらん」と言われて。さすがにそれは「イヤだなあ」と。
篠山 それで?
有働 そこで渋ったら、向こうから「もういいや」と言われてしまいました。一応その気にはなったのに。
篠山 いいのはそこからなのに。
有働 そうなんですか? なんか脱ぎ損みたいな感じでした。
篠山 そうやって羞恥心がちょっと取れたあたりからがいいんですよ。ヌードはともかく、このエピソードは面白いから是非載せましょう。
有働 ははは。もし仮にそんな写真集を出したら、親戚を総動員して500部ぐらいなら売りつけます。
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篠山氏と有働氏の対談「有働さんはヌードにならないんですか」全文は、「文藝春秋」2019年3月号と「文藝春秋 電子版」に掲載されています。