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熱烈なメッセージを送ってくるアカウントとは違ったアレンの振る舞い

――わかりやすくがっつかれたわけではなかったんですね。

新川 その落ち着いた振る舞いが罠だったのかもしれません。アレンとフェイスブックで友達になったのをきっかけに、もっと英会話を学びたいと思って、他にも見知らぬ外国人数人と友人になったんです。でもそうして繋がったアカウントはみんな詐欺アカウントだったと思います。アメリカ軍やイギリス軍、戦地のジャーナリストといったプロフィールの男ばかりで、私と繋がるとすぐに熱烈なメッセージを送ってきた。アレンと違ったのは私が「恋人がいる」と言っても、諦めず強引なところでした。

――見ず知らずの相手にいきなり「好きだ」「愛してる」と言ってくるわけですか。

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新川 それなら誰でも「これはおかしい」と思えますよね。実際、私もそう思って、繋がったアカウントのほとんどをブロックしました。

――でも、アレンは違った。

新川 彼はよく、アメリカに残してきた娘のコートニーの話をしました。かわいらしい写真も時折送られてきましたね。クリスマスが近づくと、彼女が作ったというクリスマスカードの写真もメールで届きました。疑う余地なんて少しもなかったと思います。でもある時、急に連絡がとれなくなったんです。彼に何かあったのではないかととても心配しましたよ。相手は戦場にいるんですから。電話やスカイプは軍で禁止されていると聞いていたので、このような非常事態で私と彼の連絡手段はフェイスブックとEメールだけでした。私は返事も来ないのに何通かメールを出しました。そして1週間くらいで返信が来たんです。

――結果を知っていれば巧妙な「じらし」と分かりますが……。

新川 気が気じゃなかったですよ。彼からのメールは「親友が撃たれて病院に入院したために忙しくて連絡が取れなかった」という内容でした。彼自身に何かあったのではなかったことを知りとても安心しましたが、「もうここにいるのは嫌だ。娘と暮らしたい」と切々と訴えてくるんです。私はかわいそうに思い、何か方法はないのかと彼に尋ねました。すると彼が「上司にメールで退役申請を出してほしい」と言われました。

――新川さんが、アメリカ軍の上司に?

新川 ええ。彼の作成した退役申請のメールを私から送ってほしい、と。そういう決まりなのかなと思いつつ了承してしまいました。彼が作った申請書を見ると、私が彼の“婚約者”としてメールを送る、という内容になっていた。これはおかしいなと思い、尋ねると「家族からの申請じゃないと認められないので、婚約者のふりをしてほしい」と頼まれました。私は仕方ないと思い、上司のものだと彼から教えられたアドレスに、婚約者の立場で退役申請のメールを送りました。

――……キナ臭くなってきました。