すんなり諦める態度に、つい自分から「送金する」と…
新川 数日後、彼の上司から送られてきた返事は「退役するための違約金が必要だ」というもので、退役したければ日本円で約100万円払えという内容でした。当然彼が払うものだと思いメールの内容を伝えると、彼は「軍では自由になるお金がなく、帰国したら必ず返すから貸して欲しい」と言ってきたんです。もちろん私は直接会ったこともないし、電話すらしたことのない彼にそんな大金を貸すことはできないと断りました。すると、すんなりとあきらめるんです。
――そこはあっさり引き下がったんですね。
新川 でも、その態度が私には刺さったんですよね……。後ろめたい気持ちが出てきて、つい自分から「送金する」と言ってしまったんです。当時、仕事のことやプライベートのことで色々と悩んでいました。自分は何もできない人間なんだと卑下してしまうような状態だったんです。そんなときに助けてほしいと言われ、こんな私でもこの親子を助けることならできるんじゃないかと思ってしまった。彼にはいろいろな悩みを相談してアドバイスももらっていましたし……。強引に何度も頼まれたわけではないのに、考えた挙句、私は送金する決意をしました。人助けになるのなら、という純粋な気持ちでした。彼にそれを伝えると、娘と一緒に日本に来て、必ず借りたお金を返すと約束してくれました。
――新川さんのメンタルの状態も大きかったんですね。
新川 でもこれで終わらなかったんです。入金を確認できたと“軍”から届いたメールには、さらにお金が必要だと書かれていました。名目は、交代の兵士にかかる旅費などの費用です。今度は日本円で約300万円。私にはそんなお金はないし、無理だと断りました。それから1カ月間くらい悩みました。このままでは最初の100万円が無駄になってしまう。そして、アレン親子を救えない。
――まさか……。
新川 私が半額支払えば、残りは彼がアメリカに戻ってから軍に支払うということで最終的には落ち着きました。結果的に、追加で約150万円を払ったことになります。そんな状況でも、当時の私は詐欺ではないと思ってました。というのも、彼からのメールには軍のIDコードやパスポートの写真が付いていましたし、メールアドレスが「@usa.com」だったり、私にとっては細かい部分の信憑性が高かったんです。