経験を糧に、国際ロマンス詐欺被害者のためのNPO法人を設立
――手ひどい傷を負われたご経験を糧に、今度は国際ロマンス詐欺被害者のためのNPO法人をお作りになったそうですね。
新川 STOP国際ロマンス詐欺というウェブサイトを作り、現在はCHARMSというNPO法人で理事長もしています。被害者の心の傷を癒やすカウンセリングをしたり、手口を共有して被害を防止したりしています。
――国際ロマンス詐欺ってそんなに数の多いものなんですか?
私が騙された手口は、実は古くからあるものなんです。時代が進むにつれ、細部は少しずつ変わっていっていますが、根本にあるマインドコントロールの手法は変わりません。まずは初期段階で、過剰なほどの自己開示があります。だいたいかわいそうな身の上話です。親を幼くして亡くした、妻と死別した、妻と親友が不倫していた……そういうケースが多いですね。とてもプライベートな話をしてきて親密な雰囲気を作り出します。そして頻繁に連絡をしてきて「2人だけの秘密」といった特別な関係を匂わすワードが増えていきます。
――見ず知らずの外国人と親しくなるという日常とのギャップも心理的に影響しそうですね。
新川 そして“吊り橋効果”を狙って、ハプニングが起きます。私のケースでは、突然連絡が途絶えたことですね。いつもやりとりしていた相手からいきなり連絡が途絶える、しかも相手は戦場にいるのでもしかしたら……という思いを抱かせる。この目的のために、国際ロマンス詐欺のアカウントは軍人系が多いんです。自分の事を心配させて、相手の頭の中を自分でいっぱいにする。
――よく考えられていますね。
新川 詐欺のマニュアルのようなものが出回っているんです。それに成功体験が足されてどんどんアップデートされていくんです。そして最初の送金をトリガーに搾り取れるだけ搾り取ろうとしてきます。被害者としては、せっかく送った最初のお金を無駄にしてはならない、と向こう側の要望に、詐欺だと気付くまで応じ続けてしまうんです。
――流行があったりするのでしょうか。
新川 最近は恋愛感情を利用したロマンス詐欺と投資詐欺の合体版のようなものが流行っているようです。従来のロマンス詐欺よりも信頼関係を築くのに費やす時間が短く、詐欺師としては効率が良いみたい。恋心ともうけたい気持ちを利用するんです。「2人だけの秘密だが、こんなにおいしい話がある」と持ちかけられて、最初のうちは利益が振り込まれるんですけど、ある段階で損失を出す。最初の出費を無駄にしないため、さらに送金してしまって何度も被害に遭う。このような相談が増えています。