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お金だけでなく、心も奪われズタズタにされる国際ロマンス詐欺

――2023年に大阪府警が捜査して話題になった事件もありますが、国際ロマンス詐欺はなかなかなくなりません。

新川 恋愛感情を利用する点で詐欺としてもすごく卑劣だと思っています。かつて相談してきた方の中には3度も騙されてしまい、思い詰めて自殺をしてしまった方もいるんです。本当に許せない。お金だけでなく、心も奪われズタズタにされるんです。私だって心の傷は深い。どんなに悩んでも周囲には言えませんでした。

――相談にも勇気がいるものなのでしょうか?

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新川 恥ずかしいと思う気持ち、自分の浅慮を責める気持ちがあると思います。被害を告白すること自体、心理的に相当ハードルが高いんじゃないでしょうか。私自身、「アレン」のケースを、あたかも別の人間の被害例として公表していました。多くの方の相談に乗る中で、カウンセリングをしている当の私自身も被害者なんだと相談者に伝えられたら、もっと被害者の方に寄り添えるんじゃないかと思い、「アレン」の詐欺に遭ったのはほかならぬ私なんだと告白することにしました。やっぱり勇気がいりましたよ。

ナイジェリア人を知るために顔を出していたバーで4回目の結婚

――シングルマザー、ステップファミリー、国際ロマンス詐欺。すべてご自身の実体験というのは今のお仕事をする上で重要ですか?

新川 私を騙したナイジェリア人がどういう人間なのか、より深く知るためにナイジェリア人が集まるバーに顔を出すようになりました。実は2020年に4回目の結婚をしたんです。相手はそこで知り合った20歳年下のナイジェリア人です(笑)。彼はとても真面目なので詐欺行為に手を染めたりはしていませんが、友人の中にはガーナで詐欺を学べる学校に通ってたなんていう人もいるんですよ。やはり母国の生活水準は裕福とはいえませんし、「詐欺をして何が悪い」という考え方を持つ人間がいるのも事実。詐欺師が何を考え行動しているのかが分かるので、仕事に役に立っていますよ。

詐欺をはたらいていたナイジェリア人男性

――山あり谷ありの人生を送ってこられた新川さんにとって、結婚ってなんですか?

新川 最近よく考えるんですが、私にとっては結婚って究極のボランティアなのかな、と思っています。ナイジェリア人の夫もマリッジビザをすごく欲しがっていました。もちろん好きという気持ちがあるから結婚したのですが、彼を助けたいという思いがなかったと言えば嘘になります。3度目の結婚も、シングルファザーで困っていた男性を助けたかったのかな、と。もしかしたら、そう多くの人に理解していただける感覚ではないかもしれません。でも、人を助けたいという強い思いがあるのは私にとっては真実なんです。