ガチガチに固めたリーゼント。でなければ金髪かアッシュ系のヘアカラー。

 サングラスをかけ、超ド派手なマフラーを首にまとう。

 衣装の多くは市内の名店「みやび」プロデュースによるもの。原色に金色や銀色が掛け合わされているものが多い――。

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こちらが正しい「ド派手衣装」©吉崎エイジーニョ

 またこの時期がやってきた。北九州市の成人式(正式名称=「北九州市二十歳の記念式典」※民法改正で成人年齢は18歳に引き下げられたが式典の参加対象は20歳としている)。

 “その系”の人たちの数は、現場で目視する限りでは、会場を埋める新成人(例年6000~7000人が参加)の5分の1か6分の1ほどというところだ。

それぞれのリーダー格が「門司」「小倉」などと叫び…

 同じ中学校の仲間同士集う。衣装に合わせて、個々人ののぼりや扇子を手にダベっているが、何をするでもない。およそ朝10時くらいから北九州市小倉北区の「北九州メディアドーム」に集まり、3時間ほどダベる。同級生との再会を喜ぶ場なのだ。その間、市主催の式典がドーム内で行われているが、基本的にはそこに入ることはない。

 クライマックスでは「その系」の中学校連合が「門司」「小倉」「戸畑」「八幡」「若松」という1963年の同市誕生前の旧5市ごとに集う。そして何をするのかというと…拡声器でそれぞれのリーダー格が「門司」「小倉」などと叫び、そのコールに合わせ「ド派手軍団」が歩み寄りながら声を出し合う。

 市内でも自分たちの街(区)が一番だぜ、と。そこで喧嘩になるわけでもなく、酒が入っているわけでもない。自然発生的にそれらがいくつか発生した後、三々五々帰路につく。なにせ飲みに行くにしても、衣装は長時間着ていられるものでもない。

 その間、いわゆる「背広組」「振り袖組」の新成人たちは何か恐れたり、逃げたりすることもない。平然と「ヤンキー」と「普通の子」が混在している。

撮影スポットでの順番待ちをする「ド派手衣装」軍団も ©吉崎エイジーニョ

北九州出身の筆者にも向けられる「やべーんじゃねぇの?」という目

 筆者自身、同市出身で今は東京に暮らす。出身地を言うとよくこの成人式の話になる。たいがいは「やべーんじゃねぇの?」という視点。SNSに現地の写真をアップしてみると、からかいの目も向けられる。

 そういうステレオタイプな見方、飽きた。

 なぜかというと、彼・彼女らは他者にとってみれば好みの分かれる衣装を着ているというだけ。それ自体は非難されるべきことではない。数年前、車に箱乗りで会場入りする新成人たちがいて、それは確かに道路交通法違反だったが、その他に何か問題行動があるわけではない。

 服が派手なだけ。

 このイベントが通過儀礼として同市で存在している点は、すでに2017年にここ文春オンラインにて「北九州の新成人に聞いた『将来の夢』とか『大切なもの』とか ど派手な衣装にかくされた、本当の姿が知りたくて」として記した。

 このイベントのためにお金を貯め、一日だけ派手な衣装を着て中学校時代の友人たちと再会を果たす。イベント会場で派手にやったあと、男性たちの多くは「その日のうちに坊主頭」にするなどして、次の日からまた日常に戻るのだ。