ド派手成人式、地元の人はどう思っているの?
ここで論じたいのは、そんな話ではない。実はあまり報じられていない点「このド派手成人式、地元の人はじつはどう思っているの?」という点だ。
というのも、この「成人式」が大きな転換期を迎えているのだ。
事が起きたのは2023年9月11日。北九州市議会で井上純子議員(自民未来)から武内和久市長(無所属)に質問が飛んだ。
「観光素材としての認識は持っているのか」
武内市長の答えはこういった内容だった。
「固定観念にとらわれない市発祥の衣装は、世界的な視点から注目され始めている」
「今までの発想を変える時。私たちの街の若者が紡ぎ出し、若者たちの創造力や感性によって生まれ磨かれてきたこの魅力を、ファッション、芸術としての文脈からしっかり情報発信をしていく。北九州ならではのコンテンツとして活用していきたい」
武内市長が「世界」の話をしたのにははっきりとした根拠がある。
昨年9月、このド派手衣装はニューヨーク進出を果たした。
世界的コレクションで発表された「みやび」の作品
“ド派手衣装”を2003年頃から手掛けてきた市内の貸衣装店「みやび」の作品が、同日に世界的コレクション「ニューヨーク・ファッション・ウィーク」で披露されたのだ。
かつて市側が必死に「成人式にはふさわしい服装で」と若者にPRした時代があったことを思えば、「市長公認」など嘘のような話。
ただ、武内市長はノリノリで自身も”ド派手衣装”を着て成人式を訪れる一方で、「成人の式典にふさわしくない」「街が荒れているイメージが先行する」といった意見も根強い。9月の市議会で市長に続いて答弁に応じた市企画調整局長は、ド派手衣装の成人式を市のPRに繋げるかどうかについては「慎重に検討を重ねる」と答えたという。
「カッコいい」「こっちも見ていて楽しいんですよ」「自分は同じ仲間と思われたくない」
では、この日、現場に訪れていた地元の人たちは「ぶっちゃけ、このド派手衣装をどう思ってるのか」。この点を聞いていった。
まずはギャラリーとして遠巻きに見ていた地元高校生の女子ふたり。
「着てみたい。カッコいいです。もう白の着物でいくって決めています」
夫婦でイベントを観に来ていた夫婦のうち、首都圏と北九州を往来して仕事をしている50代男性。
「伝えてほしいのは、北九州のマナーの良さですよね。他地域では酒を飲んで暴れる、という話を聞くけど、ここでは何をするわけではありません。ただみんなでわいわいとやっているだけでしょう」
確かに例年このイベントを取材していると、「怖くないの?」と聞かれる。いえ全然。まずは本人たちは目立ちたくて、写真を撮られたいと思ってやってるのでむしろ喜ぶ。今年に至っては黒・金衣装&リーゼント軍団に対し、筆者から「背景に『北九州』という文字が入るスポットがあるから全員ちょっと移動してほしい」とお願いするとじつに素直に応じてくれたりもした。
“普通”の振り袖でイベントに参加していた女性ふたり。
「カッコいいと思います(と言ってサムズアップ)」
「いいと思うんだけど自分は同じ仲間と思われたくない」
犬の散歩のついでに見学していた50代夫婦。
「楽しいからいいじゃないですか。なぜなら本人たちが楽しそうだから。こっちも見ていて楽しいんですよ。別に悪いことをしているわけではないし」
ド派手衣装の張本人たちにも話を聞いてみた。