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中国の爆笑B級ニュースが減ってきた理由が笑えない

かつての壮大なスケール感のバカバカしさはなぜ失われたのか

2018/04/02

3.政治ニュースがいちばんB級

 ほか、近年の中国社会で政治のウエイトが重くなったことも大きい。一昔前なら、役人の気が緩んでいたので地方政府関係の出来事はトホホなニュースの宝庫だったが、綱紀粛正に厳格な習近平政権のもとでは役人もアホではいられない。結果、「緑化政策」として山肌をペンキで緑色に塗るような強烈に頭の悪い仕事はずいぶん減ってしまった。

 また、中国の社会が全体的にピリピリするようになり、監視カメラや顔認証技術・IDカードの照会技術の発達、チャット会話の監視体制の強化などによって、国民が怪しげな振る舞いをすることのハードルが格段に上がった。ニセ人民解放軍を街に勝手に駐屯させるような、無駄にスケールがでかすぎるヘンなことはできなくなったのだ。

B級めいた話の最大の発信元が習政権になってしまった

 むしろ現代中国では、B級めいた話の最大の発信元は習政権になっている感もある。自分が文革時代に下放された村を観光地化、習近平アプリや主席の業績を称える「神動画」のネット拡散、病的なまでに細かいネット検索用語規制、など、いまや「そりゃないだろ!」と言いたくなる話はいずれも政治がらみなのだ。

 だが、これらはいずれも習近平の権力が、バカげたことをバカとして笑うことを許さないほど強大化した裏返しだ。ちっとも心から楽しめないのである。

中国共産党の幹部養成機関・中共中央党校が開発した習近平思想学習アプリ『学習中国』。笑ってはいけない習近平シリーズのひとつである。

笑えなくなった後はどうすればいいんだ

 というわけで、中国が良くも悪くも笑えない国になってしまったことが、中国B級ニュースが衰退した最大の原因であろう。

 言うまでもなく、日本と中国は様々な摩擦を抱えており、ともすれば政権への忌避感がその国の人間や社会への警戒心や嫌悪感につながりがちだ。B級ニュースというのは、そうした心情を楽しくほぐしてくれる作用もあるため、中国が「笑えなく」なったことは長期的に見ると日本の民間社会の対中国認識にジワジワと響いていくのかもしれない。

 観察する限り、今後、代わりにソフト面の対中認識を担ってくれそうなのは、日本でも気軽に楽しめるようになった中国ローカル料理のグルメネタ(要するに蘭州ラーメンである)、自己アピール好きの中国人の趣味にマッチして独自の進化を遂げているかわいい女の子のコスプレイヤー観察ネタ、意外とクオリティが高くてハマるものも多い中国のゲームアプリ関連ネタあたりかとも思われる。

 これまで中国のトホホネタで大いに食わせてもらってきた自分としては残念なところでもあるが、そろそろ中国B級ニュースライターも職替えをするべきときに来ているのかもしれない。

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