イ・ソンギュンは10月28日、11月4日、そして12月23日の3回にわたり、仁川警察に出頭して長時間の取り調べを受けた。取調官はA子を下の名前で呼んで懇意であることを隠そうとせず、一方的にその供述を採用したという。イ・ソンギュンは死の前日、偏向した捜査への不信を訴えて嘘発見器の導入を求める意見書まで提出していた。
韓国では昨年、薬物で前科のある男性Cが麻薬密輸を自作自演して50代男性を陥れる事件も起きている。Cは同年5月、男性の住所を届け先としてフィリピンから覚醒剤を輸入。男性は中身を知らないまま荷物を受け取って30分後、Cから情報提供を受けていた捜査員に逮捕された。だがほどなくCがソウルで逮捕され、捏造が発覚。男性は8月に釈放されたが、事件を担当した仁川地検は2カ月近く公訴取消を拒んだ。
Cに対する公訴状によると、ユン大統領が掲げる「麻薬との戦争」が本格化した昨年初め、大統領直属の情報機関・国家情報院の職員がCに麻薬事件での実績作りを依頼したという。ターゲットにされた50代男性も薬物の前科があり、Cは職員からその個人情報を得ていたとのことだ。
G-DRAGONのようなトップスターは警察にとって「大きな獲物」
昨年4月には、警察庁長官が“麻薬捜査の有功者は、従来の6倍の人数を特別昇進させる” と語ったことがあり、実際に同年は計2170人の警官が特別昇進している。全てが麻薬関連ではないものの、前政権の1年目(2017年)の542人に比べて著しい増加だ。
警察官の昇進には、勤続年数や年次審査に基づく通常の昇進と特別昇進がある。総数は決まっており、後者が増えれば前者が減る。そのため現地紙「韓国日報」(2023年6月25日付)によると、警察は “特別昇進” を目指して麻薬捜査にリソースを集中させるようになったという。
またA子の供述に基づくイ・ソンギュンらの容疑は江南地区などソウルが舞台だが、捜査は近郊都市の仁川警察が担当していた。現地紙「日曜時事」(2023年11月27日付)は麻薬事件を担当する捜査関係者のコメントとして、捜査権の移管を求めた江南署に対して仁川警察が「欲を出した」という話を伝えている。
有功者と認められる上で、イ・ソンギュンやG-DRAGONのようなトップスターは大きな獲物のようだ。