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 塚原 父親も虐待を受けていたと叔母から聴いています。ただ、自らの虐待経験を理由に、自分の子どもを虐待してもいいわけではありませんよね。

 私や叔母にも子どもがいます。「自分の子どもが生まれたときに虐待してしまうのではないか」という恐怖が私と叔母に共通していました。SNSでは「そんな父親の血をどうして残すんだ」などという誹謗中傷的なコメントも目にしますが……。

 虐待を受けて育った私たちは「被害者らしく生きろ」なんてことも言われることがあります。でも、「それは違うでしょ」って思うんです。これを本当に言いたくて。

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 性被害の経験を理由に、幸せになっちゃいけないと思った人の中には、結婚を辞めた方もいるんですよ。被害者が人並みの幸せと生活をどうして望んではいけないのか、と私は思います。

 そして、被害者は1人で性被害の記憶を抱えて苦しんでいる。最近ではSNSで発信することもできますが、閉ざされて誰にも言えないまま苦しむのは、これほど辛いものはありません。

 告発記事を出した後、「私も被害に遭っている。苦しい」と声を上げる人がかなりの人数いました。このことに、私は本当にビックリしたんです。言いたいのに言えない人たちがこれほどいるのかと。

 なぜ言えないのかというと、例えば告発記事を出したことがきっかけで「恥さらし」と親戚から言われたんですね。「思い出すあんたが悪い。なんで忘れないのか」と。

 でも、それは間違いだと思うんですね。声に出していかなくちゃいけない。

©文藝春秋

 秋山 被害者が沈黙させられて、そして自責的になってしまう。このような風潮が社会全体にあるということですね。

 塚原 私も自分を責めた時期がありました。「外で言うなよ」と言われることで、自分も悪いように感じるんですよね。斉藤先生の本にもありましたが、共犯にされているような感覚です。

「生理反応が起きる自分の身体が憎い」

 秋山 番組の合間に、塚原さんからお話がありましたけれども、性的な刺激があったときに起きる生理反応さえも、自責のきっかけになるとおっしゃっておられましたね。

 塚原 はい。それで、叔母にも泣いて言ったことがあったんですよね。「生理反応が起きる自分の身体が憎い」って。本当にあれは苦しい。

 自分の身体が「汚い」と思っていた時期もあり、夫に対して大泣きしたこともありました。自分の身体が、本当に憎くて、憎くて……そういう反応をさせられた身体が大嫌いで。

 今でも、やっぱり鏡を見るのがダメなんですよ。自分の身体の全身を見たくない。“父親にされた汚い身体”というふうに思えて。

 それから、私は湯船に入れないんですよね。普段の生活ではシャワーで済ませています。というのも、お風呂は父親から性虐待を受けてきた苦痛の場所だからです。冷たい水に何度も何度も漬けられて「このまま死ねたらいいのに」と思ったこともありました。だから、お風呂という場所が本当に苦手です。父親の行為は、単純な性虐待ではないと思います。弟や私の心を殺していったんです。

 性被害に遭うことで、私たちの心は一生壊されたまま。けれども、加害者にはなんのお咎めもない。被害者が声を上げなければ、加害者はそのままです。

 この状況は本当におかしいと思います。だからこそ声を上げました。

本記事の全文、および秋山千佳氏の連載「ルポ男児の性被害」は「文藝春秋 電子版」に掲載されています。

 

■連載 秋山千佳「ルポ男児の性被害」
第1回・前編 「成長はどうなっているかな」小学校担任教師による継続的わいせつ行為《被害男性が実名告発》
第1回・後編 《わいせつ被害者が実名・顔出し告発》小学校教師は否認も、クラスメートが重要証言「明らかな嘘です」
第2回・前編 中学担任教師からの性暴力 被害者実名・顔出し告発《職員室で涙の訴えも全員無視》
第2回・後編 《実名告発第2弾》中学担任教師から性暴力、34年後の勝訴とその後「ジャニー氏報道に自分を重ねる」
第3回・前編 《実名告発》ジャニー喜多川氏から受けた継続的な性暴力「同世代のJr.は“通過儀礼”と…」
第3回・後編 《抑うつ、性依存、自殺願望も》ジャニー喜多川氏による性暴力 トラウマの現実を元Jr.が実名告発
第4回・前編 「なぜ今さら言い出すのか」性被害を訴えた元ジャニーズJr.二本樹顕理さん 誹謗中傷に答える
第4回・後編 「ジャニーさんが合鍵を?」元Jr.二本樹顕理さんを襲った卑劣な“フェイクニュース”
第5回・前編 「性暴力がなければ障害者にならなかった」41歳男性が告発 小学3年の夏休みに近所の公衆トイレで…
第5回・後編 《母は髪がどんどん抜け、妹からは「キモい」と…》性被害後の家族の“拒否反応”の真実 41歳男性が告白
第6回・前編 目の前で弟に性虐待を行う父親 「ほら見ろよ」横で母親は笑っていた《姉が覚悟の実名告発》
第6回・後編 「絶対に外で言うなよ」父親の日常的暴力と性虐待の末に29歳で弟は自殺した《姉が実名告発》
第7回・前編 NHK朝ドラ主演女優・藤田三保子氏が“性虐待の元凶”を実名告発「よく死ななかったと思うほどの地獄」
第7回・後編 「昔、兄にいたずらされたことが」塚原たえさんの叔母、藤田三保子氏が“虐待の連鎖”を実名告発

 

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秋山千佳サイト http://akiyamachika.com/contact/