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「独居老人で世間とのつながりがないから、窓を閉めて密封されたら気が付かない。玄関を閉めたら関係は終わり。人とのつながりがないことがやっぱり一番のネックでしょうね」

隣近所との関わりがない気楽さがメリットだったが…

 このマンションは住人の5分の1が高齢者の一人暮らしだ。また同じことが起きる可能性はある。取材を続ける中で、ここ以外でも「孤独死が起きた」という話は本当によく耳にした。もはや珍しいことではなくなっていると実感する。国交省が2021年に制定したガイドラインによれば、心理的瑕か疵し物件、いわゆる事故物件の定義は「自死や他殺(自然死または不慮の死以外)が起きた場合」と「特殊清掃等が発生した場合」となっている。つまり高齢者が自室で自然死していた際、発見が早く特殊清掃を入れずに済めば事故物件にはあたらない。しかし交流のないマンションでは気付かれにくく、事故物件になってしまいやすい。

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 孤独死の発生は思わぬ形で後を引くこともある。警察に連絡して遺体を引き取ってもらった後、部屋を含むその後の処理を依頼するべき親族がいなければ最終的に管理組合が遺品の整理などをせざるを得ない。相続人が見つからない、あるいは見つかっても全員が相続放棄するケースは増えている。新たな所有者が見つからないと管理費は滞納状態が続き、総会の決議にも支障が出るため、管理組合が相続人を調査したり相続財産管理人制度を利用したりして対応する必要がある。法律知識が必須のため弁護士や司法書士に依頼することになるが、その費用も管理組合が支払わねばならない。隣近所との関わりがない気楽さがメリットだったはずが、話したこともない隣人の死が自身の持つ財産の価値や支出に大きな影響をもたらすのだ。