高齢化を大きな要因として日本の社会的な課題となっている「空き家問題」。そんな中、「DIY型賃貸借」という仕組みが注目されている。いったいどんな制度なのか。

 ここでは、NHKスペシャル取材班による『老いる日本の家』(マガジンハウス)の一部を抜粋。空き家になってから20年、築100年の家の処分に悩む男性のエピソードを紹介する。(全2回の2回目/続きを読む)

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DIY型賃貸借で築100年の空き家がよみがえる

 東京都中央区、タワーマンションが立ち並ぶ足元の路地で築100年の空き家が生まれ変わろうとしていた。筑前賢一さん(66)が所有する亡き祖母の家だ。相続から2年、空き家になってから20年が経ち、ようやく解決の道筋が見えてきた。

 どこに相談しても売却を勧められるばかりで決断できずにいた筑前さんに、地元の不動産会社が提案したのが「DIY型賃貸借」の仕組みだった。通常、中古物件を賃貸に出す場合は持ち主がリフォームを行った上で借り主に引き渡す。筑前さんも当初検討したものの、リフォーム代に1000万円近くかかるとわかり、諦めていた。一方、DIY型賃貸借ではリフォームするのは借り主の側だ。持ち主の許可の範囲で好きに手を加えられる上に、リフォーム代を負担する分、安い賃料で借りられる。国交省でも空き家問題解決への有効な一手として10年ほど前からガイドラインや契約書式例などを公開し、積極的な支援を行っている。

家が持つ“価値”に第三者の目を通すことで気づく

 このスキームで借り主を見つけるには、現状の物件のアピールポイントを明確にすることが重要だ。それを探すべく空き家を訪れた不動産会社の担当者たちは建物のディテールに声を弾ませる。

「ベランダの風合いがすごくかわいい。これは残せるといいですね」

「こういう磨りガラスは今は貴重なんですよ。懐かしさがあって素敵です」

「おそらく大正時代の建築物というだけあって外観に趣があるので、古民家風カフェや居酒屋など飲食店で興味を持ってくれるところがあるかもしれませんね」