時代背景を伝えつつ、この対比で表すものは大きい。
2021年の出来事だから制作にかかったのは事件が話題になった直後だろう。短期間でありながらその語り口は仕上がっていて、無理がない上に説得力がある。ほぼ事実に即しているからなのかもしれない。映画の最後にモデルとされた実在の人物の映像が流れるが、その口から劇中のセリフと同じ言葉が流れてくる。ここは「俺、まんま書いただけなのよね」という脚本家のシャレなのだろうか。
「庶民の典型」の私としては…
いずれにしろ、誰かが「相場操縦的行為」として裁かれる可能性のある事案であり、もしかすると裁かれたのは主人公側であったかもしれない。しかし、「庶民の典型」の私としてはキース・ギルに大きく肩入れするしかない。劇中でもキースの配信するユーチューブを観て同調する市井の人々が描かれている。制作側が狙ったのは、そんな庶民の姿に自分を重ねて痛快に思う観客なのだろう。
INTRODUCTION
コロナ禍まっただ中の2021年1月、ネット掲示板に集った小口投資家たちがSNSを通じて団結。倒産間近と囁かれていたゲームストップ社の株を買いまくって、同社を空売りしていた大手ヘッジファンドに大損害を与え、金融マーケットを震撼させた事件を映画化。原作は『ソーシャル・ネットワーク』の原作者ベン・メズリックのノンフィクション。コロナ禍で疲弊した社会で夢と希望を追い求めた庶民の悲喜こもごもを、ユーモアたっぷりに描く。
STORY
全財産の5万ドルをボロ株とみなされていたゲームストップ株につぎ込んでいた平凡な会社員キース・ギル(ポール・ダノ)は、“ローリング・キティ”という別名義で動画を配信し、この株が過小評価されているとネット民に訴える。共感したフォロワーがゲームストップ株を買い始め、株価はまさかの大暴騰。同社株の空売りを目論んでいた大富豪たちに巨額の損失を与える。庶民がウォール街のエリートに反旗を翻したこの出来事は社会現象に発展。キースの行く手には想像を絶する事態が待ち受けていた…。
STAFF & CAST
監督:クレイグ・ギレスピー/出演:ポール・ダノ、ピート・デヴィッドソン、ヴィンセント・ドノフリオ、アメリカ・フェレーラ、ニック・オファーマン、アンソニー・ラモス、セス・ローゲン/2023年/アメリカ/105分/配給:キノフィルムズ/2月2日全国公開