昨秋オープンした天空の展示スペースで、光と色に溢れた展覧会が開かれ人気を博している。
東京・虎ノ門ヒルズ ステーションタワー45階「TOKYO NODE」での「蜷川実花展 Eternity in a Moment 瞬きの中の永遠」だ。
あらゆる手を尽くし没入感を演出
当代一の売れっ子写真家・映画監督の蜷川実花が、
「これは私のキャリアの中でも最大規模の展覧会」
とオープン時の記者会見で言った通り、展示はスケールが半端じゃない。タワービルのフロア全体をあてた会場の延べ面積は約1500㎡、天井高も最高で15mという巨大スペースが用いられている。
十数個に仕切った空間一つひとつを作品とみなし、中に分け入る観客も作品の一部とみなす「インスタレーション」と呼ばれる展示手法をとっているから、没入感もケタ違い。会場内は、蜷川作品最大の特徴でときに「蜷川カラー」とも称される独特の色彩で埋め尽くされ、外界とは完全なる別世界を形成する。身を置いていると、自分がいつどこにいるのか見失いそうになる。
会場を順にたどってみれば、展示はまず色のない通路から始まる。その先の壁一面を覆い尽くすのは、咲き誇る花弁と枯れた花々。劇的にライトアップされ妖しい輝きを放つ《残照 Afterglow of lives》だ。コロナ禍にだれもが体感したであろう「停滞と再生」のあいだを激しく行き交う感情が思い出される。
続く空間ではランダムに並ぶボックス状のオブジェに、都市空間から採取されたイメージが映し出されている。《Breathing of Lives》だ。電車の窓に映る街並みや、高所から俯瞰するビル群を眺めていると、そこに人の営みがあり時間が流れていることを思わせる。人影は映っておらず画面を構成しているのは無機物ばかりなのに、何かの息遣いが感じられ、なまめかしい感じがしてくるのは不思議だ。