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 ひとつだけ心残りを挙げれば、今展がインスタレーションに注力しているゆえ、蜷川実花の写真そのものをじっくり味わう場面が少ないこと。

 それを補うためというわけでもないだろうが、時期を同じくして蜷川写真を堪能できる展示が開かれている。小山登美夫ギャラリー六本木での、同タイトルの蜷川実花個展だ。

蜷川実花「Eternity in a Moment 瞬きの中の永遠」小山登美夫ギャラリー六本木 展示より ©︎mika ninagawa, Courtesy of Tomio Koyama Gallery

 こちらではTOKYO NODE展示と同モチーフの、蜷川実花の写真がたっぷりと並んでいて見応えあり。写真プリントになった作品を眺めていると、独特の明るい色合いがこちらの身体に沁み込んでいくようで快い。

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蜷川実花「Eternity in a Moment 瞬きの中の永遠」小山登美夫ギャラリー六本木 展示より ©︎mika ninagawa, Courtesy of Tomio Koyama Gallery

 蜷川はこの作品シリーズで、改めて光に着目したのであろうことにも気づく。透き通った水の中を鯉が泳ぐ様子、花びらが浮かんだ水面、そして華やかな姿かたちを見せつける花の数々。画面を満たす色合いが極めて美しいのは、それらを照らす光の恩恵なのだと思い至った。 現代を生きる私たちが、「いまこういうのが見たい」と心に思い描いている潜在的なイメージを、半歩ほど先んじて現実のものにして観せてくれる。それが蜷川実花というアーティストのしていることだろう。われらが時代を代表するイメージメーカーがいてくれる幸せを噛み締めながら、両展を観てまわりたい。

INFORMATION

蜷川実花展 Eternity in a Moment 瞬きの中の永遠
TOKYO NODE ギャラリーA/B/C
2023年12月5日~2024年2月25日
https://tokyonode.jp/sp/eim/

蜷川実花「Eternity in a Moment 瞬きの中の永遠」
小山登美夫ギャラリー六本木
2023年12月23日~2024年1月27日
http://tomiokoyamagallery.com/