立場を大きく変えた志位氏
佐藤 しかしその後、志位さん自身が立場を大きく変えています。
2015年、新安保法制の成立直後、共産党は、新安保法制廃止をめざし、「国民連合政府」の樹立を呼びかけ、そこで「野党による連合政権ができた場合、安保条約廃棄にこだわらない」としました。
さらに会見で、「自衛隊を活用することは当然」と発言しています。
松竹 「安保条約が廃棄される以前にも自衛隊を使うという考えは間違いだ」と私に自己批判を求めた立場とは180度変わっています。ある知人からは「共産党を辞める必要はなかったのでは」と言われました。
佐藤 志位さんの立場は、かなり揺れているわけですね。
松竹 志位さんは、2000年の党大会で、不破哲三さんの後任として党委員長となりますが、この大会で「(自衛隊の存在を憲法違反とした上での)自衛隊活用の方針」を決めたのは不破さんです。田原総一朗さんの『サンデープロジェクト』での発言がきっかけでした。
この不破さんの方針に志位さんとしては、どこか納得できないものがあったのでしょう。だから、2005年の私の論文を断固否定した。
佐藤 でも、10年後にはそれを自分で翻した。結局、松竹さんを除名したのは、志位さん自身が悩みながら揺れ動いてきた歴史を直視したくないからですね。
松竹 先日、田原さんは、「志位さんは本音では、自衛隊も安保も認めないと政策としては成り立たないと考えている。しかし、それを言ったら共産党が崩壊するから言えないんだ」と言っていました。本来、志位さんは、私を除名せずに、私と一緒に進むしかないのに、徹底的に議論する覚悟がなかったのでしょう。
佐藤 志位さんは、心のなかでは、松竹さんを除名したくない、しかし組織のトップとしては、切らざるを得ない。すると、松竹さんの「不品行」を理由に除名するのが最も簡単ですが、文字通り「品行方正」な松竹さんですから、党の方も困ったことでしょう(笑)。
松竹さんは、この1月に4年ぶりに開催される党大会での除名処分の撤回を求め、再審査請求をなさっていますね。
再審査請求を議題にするのか
松竹 再審査規定は規約に存在していますが、過去には一度も例がない。実際に党大会で議題にかけられるのかさえ分からない状況です。
ただ、党大会を控え、知らない党員からも連絡が来ます。「党大会で松竹さんが復党しなかったら、離党するということを表明して代議員に立候補した」という方もいました。
佐藤 党本部は対応に苦慮していることでしょう。
松竹 全会一致で否決したいので、代議員の名簿に私の支持者が1人も入らぬように画策しているようです。また、「党大会に1200字までなら意見を出してよい」という規定があるのに、今回は「党大会決議案に対する感想・意見・提案をお寄せください」と書かれています。
佐藤 大会決議案には、松竹さんの除名については書かれていないから、意見は出せないわけですね。
ところでこれまでにも除名された党員はいたのに、「再審査」が請求されなかったのはなぜでしょうか。
松竹 そこは不思議ですね。ただ私の場合は、とにかく党に戻りたい。「除名」処分を受けても、「そんな党だから愛想をつかす」という気にはとてもなれないんです。私はいまも共産党に希望をもっています。
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本記事の全文「志位委員長よ、なぜ私が除名なのか」は、「文藝春秋」2024年2月号、および「文藝春秋 電子版」に掲載されています。
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