M-1決勝、最終決戦のあの瞬間、パタパタとめくれる審査員票はラストの松本人志氏を残して、ヤーレンズ3、令和ロマン3。ヤーレンズにその時の心持ちを聞くと、全く予想もしなかった答えが返ってきた――。

「やめることのほうが偉い」と思っていた二人がここまで芸人を続けてこられたその理由と、コンビ円満の秘訣、そして最後に楢原が我々にぶつけた大いなる疑問。激動のお笑い界で、芸人たちは、そしてヤーレンズはどう生きるのか。

ヤーレンズの楢原 真樹 (ナラハラ マサキ:左)と出井 隼之介 (デイ ジュンノスケ:右) ©深野未季/文藝春秋

スベってるトム・ブラウンを見て今の事務所へ移籍

――大阪吉本を退社して、東京へ。ケイダッシュステージに入ったのは、どういう経緯だったのでしょうか。

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出井 トム・ブラウンですね、一番大きいのは。大阪時代に、MBS漫才アワードっていう高校生100人が面白い芸人を選ぶ賞レースがあって。そのとき僕はたまたまトム・ブラウンを見かけてて。むちゃくちゃスベってたんですよ。女子高生の前で(笑)。

――スベってた(笑)。

出井 もうこれ芸人やめるんじゃないかっていうぐらい、女子高生の前でスベってました。なんか暴力的なネタをしてて。

――(笑)。

出井 その様も面白いしやってるネタも面白かったので、覚えてたんですよ。携帯にメモしてて、「トム・ブラウン」って。それでこっちでたまたまケイダッシュステージのマネージャーさんと挨拶する機会があって、事務所ホームページ見たら、トム・ブラウンの名前があった。ああじゃあ結構いいかもしれないなっていうのはありました。

©深野未季/文藝春秋

――トム・ブラウンのあの感じを大事にしてくれる事務所なんだと。

出井 そうです、そうです。

楢原 あの時も「やっと会えたね」でした。辻仁成。

――(笑)。M-1の決勝で活躍するお二人を見て、(トム・ブラウン)みちおさん号泣されていましたね……。

楢原 嗚咽してたもん、アアアーアーーって。なんでお前がそんな泣いてんのって(笑)。

出井 まあ、みちおは特別優しいっていうのはありますよね。

楢原 トム・ブラウンとは本当ずっと一緒にやってたんでね。

同世代の芸人はほとんどやめちゃった

出井 同世代の芸人もっといっぱいいたんですよ。ケイダッシュステージに10組~15組ぐらいいたかもしれないですけど、もうほとんどやめちゃった。漫才師でいうと、僕らとトム・ブラウンしかいなくなっちゃった。

――同世代の芸人さんがやめていく時、どういうことを思われましたか。

楢原 偉いと思いました。

出井 全然やめることが負けとか失敗じゃないので。むしろそっちの方が……