大学を卒業してから映画美学校という専門学校(正式には特定非営利活動法人)に通い始めました。大学は四年制の総合大学で、文芸創作学科という少し特殊な学科で学びました。そこで映画評論家の教授と出会い、映画を観る授業を受講したことから今の自分があるのではないかと思います。

草野なつか監督

“映画に関わる仕事”で行き着いた先が監督

 映画美学校で学んだのち自主制作映画の現場にスタッフとして参加するようになるのですが、本当に仕事が出来なくて、集団行動も苦手。不器用な上に良くない意味で生真面目。スタッフには一番向いていない性格でした。映画に関わる仕事を何かしたいと思っていたはずなのに、これでは何もできないと考え、行き着いた先が監督でした。偶然、助成金で長編を撮れることになり監督デビュー。本当にラッキーだったと思います。「決断する」ことが一番の役目である監督という役割は、それなりに向いていると思います。

 

一貫して作品テーマは「不在」

ADVERTISEMENT

 映画の好きなところの一つに「そこにある物・いる人しか映らない」というところがあります。そして、矛盾するようですが「画面外=映っていないもの」を強く感じさせるような作品がとても好きです。これは、大学の授業で毎週さまざまな映画を観るなかで自然と教わったことのように思います。また、私のこれまでの作品は全て「不在」というテーマが一貫しており、この点もこの「映画の特性」に関わりがあるような気がします。ここ数本は自分自身の中に「実際に存在する不在」、殊に『王国(あるいはその家について)』を撮るきっかけをくださった平野勇治さん、同じく本作を編集するなかで大きな影響を受けた堀禎一監督の不在が大きかったように思います。