1ページ目から読む
5/5ページ目

――司馬さんのようによく読んでこられた作家も直木賞を取られてていますが、それと同じ賞を取れたことについての感慨は何かありますか。

万城目 デビューしてから僕は多分10回以上、そういう偉人といいますか、有名な作家方が冠の賞にノミネートされて今まで全部落ちてきまして、受かるということがもうないだろうっていう、何となく結果的にそういうふうにちょっといじけて思いがちだったんで、だからやっぱりもらえるというのが未だにしっくりこないというか、本当かなっていうまだそういう段階です。

次は森見さん。バトンを渡したい

――では万城目さん、質疑を受けて改めて最後に一言お願いします。

ADVERTISEMENT

万城目 今日は本当に駄目、取れないだろうと思っていたんで「どうせ駄目ですよ」みたいな感じでいじけておりましたら、去年、忘年会でご一緒した森見登美彦さんとヨーロッパ企画の上田誠さんが、「そんなんでは駄目だ」と。「だいたい直木賞というのは祭りであって、楽しんだもん勝ちである。6度目だったらいけるやろう」とワッショイワッショイみたいな感じで、一緒に待ち会しようじゃないかっていう感じで、強引に押し切られまして。

 じゃあ、綿矢りささんも誘おうかという話になりまして、今日は4人で待ち会しようというふうになりましたら、綿矢りささんが「脱出ゲームはしないでいいのか」ということを急に言ってきたもんですから、今日昼間からずっと森見さんと綿矢さんと3人で脱出ゲームをして、非常に込み入った仕掛けを解いてですね、銀行強盗を完遂するっていうのを2時間ぐらいやり、もう本当にそれで疲れ果てて3人ぐったりした後、喫茶店でUNOをやりまして。そのUNOがまたカードを切れども切れども、新たに補充されてくるっていうその地獄のようなUNOで、それをようやくやり終えたらまたこれ全員がぐったりきていました。

 それで7時過ぎでしたから、結局5時間ぐらい待ってようやく一報が来まして、本当に一緒に待っていただいた綿矢さんと森見さんと上田さんには本当に感謝です。特に森見さんとは今までも、直木賞というものに対して、お互い不毛な議論を交わすことが多く(笑)、我々は正攻法ルートではなくて、不必要に面白ルートから攻めてるんじゃないかと……。未踏の安全な進み方が確保された道ではなくて、裏の誰も通っていない絶壁をあえて目指しては滑落してるんじゃないかって話をずっとしていて、なかなかこっちのルートからは登攀は難しいんじゃないか、もう二度と無理じゃないかみたいなことを、お互い話すような話さないような感じだったんで、こうして本当に取れてしまったことがびっくりして、やっぱり次は森見さんだとバトンを渡したい気持ちでございます。

2024年1月17日 東京會舘にて

八月の御所グラウンド

八月の御所グラウンド

万城目 学

文藝春秋

2023年8月3日 発売