――「スポーツ報知」でサッカーのワールドカップについて、1ヶ月にわたってコラムを書いていただいたのですが、今作でこのコラムが何か作品に影響を与えたということはありますか。願望込みで言っているんで、なしでもいいんですけど(笑)。
万城目 ちょっと考えますんで……。ワールドカップで最初3本の約束が、なぜか7本ぐらい書かされたんですけど、ちょうどその後に『八月の御所グラウンド』を書いたので、ちょっと焦りみたいのあったんじゃないですか。サッカーの記事ばかり書きすぎてるっていう(笑)。それが(執筆への)集中に繋がったかもしれない。
――むしろ邪魔していたという感じですね(笑)。
万城目 そんなことはないですよ。でもあれでね、スポーツの、何ていうか肝みたいなのをね。集中してカタール大会全部見ましたんで、それも少しは役に立っているはずです。
――ニコニコ動画でユーザーの方の質問代わりに読ませていただきます。非日常な出来事が起きても、登場人物がそれをそっとしておいて見ないふりをするのが面白かったです。万城目さんは霊感は強い方でしょうか? 万城目さんももし日常の中でそのような非日常の空間が発生しても、登場人物たちのように見ないふりをしますでしょうか?
万城目 まず霊感は全くなくて、オカルト全般をちょっと憎むぐらい嫌いですけれども、そういうもの(非日常的なこと)を見たら、意外と見てもびっくりして言えないと思いますね。
――先ほど直木賞とはすれ違うばかりで、目と目が合うことがなかったということですが、今回ついに目が合って、万城目さんが敬愛されていて、よく読んでいた司馬遼太郎さんも直木賞(受賞者)ですが、実際目が合った直木賞ってどんな風貌をしているか? 自分のイメージと比べてどうでしたか。
万城目 例えをさらに例えるのは難しいんですけれども(笑)。それはこれからわかってくることだと思うんです。ただやっぱりどこか他人ごとのような、こうして受賞してこういうところ(記者会見の席)に座っていても、どこか他人ごとのような感覚があるので、ひょっとしたらもうそれっきりなのかもしれないです。もう目が合って、もうそれで終わったのかもしれないです。