1月17日、第170回芥川龍之介賞と直木三十五賞(いずれも日本文学振興会主催)の選考会が東京・築地の料亭「新喜楽」で開かれ、芥川賞は九段理江さん(33)の「東京都同情塔」(「新潮」12月号)、直木賞は河﨑秋子さん(44)の「ともぐい」(新潮社)、万城目学さん(47)の「八月の御所グラウンド」(文藝春秋)がそれぞれ選ばれた。
文春オンラインでは、近日中に受賞者のインタビューを配信する。
受賞者の経歴は…
九段理江さんは、1990年9月27日埼玉県浦和市(現さいたま市)生まれ。2021年、「悪い音楽」で 第126 回文學界新人賞を受賞しデビュー。芥川賞は2回目のノミネートだった。
〈作品〉「悪い音楽」2021年文學界5月号。「Schoolgirl」21年文學界12月号=第166 回芥川賞候補、単行本は22 年文藝春秋刊(「悪い音楽」併録)=令和4年度(第73 回)芸術選奨文部科学大臣新人賞受賞。「しをかくうま」23年文學界6月号 =第45回野間文芸新人賞受賞。「東京都同情塔」23年新潮12月号。
河﨑秋子さんは、1979年北海道別海町生まれ。北海学園大学経済学部卒業後、ニュージーランドで 1年間緬羊飼育を学ぶ。帰国後、酪農を営む実家で従業員と羊飼いをしながら小説執筆を開始。2012年「東陬遺事(とうすういじ)」で第 46 回北海道新聞文学賞(創作・評論部門)、14年『颶風の王(ぐふうのおう)』で三浦綾子文学賞、16年同作で JRA賞馬事文化賞を受賞。19年十勝管内に転居し、以後は執筆に専念。直木賞は2回目のノミネートだった。
〈作品〉『颶風の王』2015年KADOKAWA刊=三浦綾子文学賞受賞、JRA賞馬事文化賞受賞。『肉弾』17年KADOKAWA刊=第21回大藪春彦賞受賞。『土に贖う』19年集英社刊=第39回新田次郎文学賞受賞、第36回織田作之助賞候補、第33回三島由紀夫賞候補、第11回山田風太郎賞候補。『鳩護』20年徳間書店刊。『絞め殺しの樹』21年小学館刊=第167回直木賞候補、第39回織田作之助賞候補。『鯨の岬』22年集英社文庫刊(「東陬遺事」併録)。『清浄島』22年双葉社刊。
万城目学さんは、1976年2月27日生まれ。大阪市出身。京都大学法学部卒。2006 年、第 4 回ボイルドエッグズ新人賞を受賞した『鴨川ホルモー』でデビュー。直木賞は6回目のノミネートだった。
〈作品〉『鴨川ホルモー』2006年産業編集センター刊(のち角川文庫刊)。『鹿男あをに よし』07年幻冬舎刊=第137回直木賞候補。『プリンセス・トヨトミ』09年文藝春秋刊=第 141回直木賞候補。『かのこちゃんとマドレーヌ夫人』10年筑摩書房刊=第143回直木賞候補。『とっぴんぱらりの風太郎』13年文藝春秋刊=第150回直木賞候補。『悟浄出立』14年新潮社刊=第152回直木賞候補。
芥川龍之介賞・直木三十五賞は、菊池寛(明治21年~昭和23年)が昭和10年に制定したもの。芥川賞は雑誌(同人雑誌を含む)に発表された、新進作家による純文学の中・短編作品、直木賞は新進・中堅作家によるエンターテインメント作品の単行本(長編小説もしくは短編集)のなかから、最も優秀な作品にそれぞれ贈られる。正賞は時計、副賞は100万円。
芥川賞は、「文藝春秋」3月号(2月9日発売)に受賞作全文と選評が掲載される。また、直木賞は、「オール讀物」3・4月合併号(2月22日発売)に受賞作の一部と選評が掲載される。
現在の選考委員は、小川洋子・奥泉光・川上弘美・島田雅彦・平野啓一郎・堀江敏幸・松浦寿輝・山田詠美・吉田修一の各氏(芥川龍之介賞)、浅田次郎・角田光代・京極夏彦・桐野夏生・髙村薫・林真理子・三浦しをん・宮部みゆきの各氏(直木三十五賞)が務めている。
■第170回芥川龍之介賞 候補作(掲載誌)※作者五十音順・敬称略
安堂ホセ「迷彩色の男」(文藝秋季号)
川野芽生「Blue」(すばる8月号)
九段理江「東京都同情塔」(新潮12月号)
小砂川チト「猿の戴冠式」(群像12月号)
三木三奈「アイスネルワイゼン」(文學界10月号)
■第170回直木三十五賞 候補作(出版社)※作者五十音順・敬称略
加藤シゲアキ「なれのはて」(講談社)
河﨑秋子「ともぐい」(新潮社)
嶋津輝「襷がけの二人」(文藝春秋)
万城目学「八月の御所グラウンド」(文藝春秋)
宮内悠介「ラウリ・クースクを探して」(朝日新聞出版)
村木嵐「まいまいつぶろ」(幻冬舎)