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クイズと『HUNTER×HUNTER』は似ている? 「知識だけじゃなく戦略も必要」SF作家・小川哲が語った“深すぎるクイズ論”

『君のクイズ』小川哲さんインタビュー #1

genre : エンタメ, 読書

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 2022年10月7日、クイズ小説の金字塔とも言える作品が刊行された。作家・小川哲さんが「競技クイズ」を題材に書き上げた『君のクイズ』(朝日新聞出版)だ。クイズ番組で起きた“ゼロ文字押し正答”の謎をめぐる衝撃的なストーリーに、作家の伊坂幸太郎氏やテレビプロデューサーの佐久間宣行氏らが絶賛の声を寄せ、発売前から異例の注目を集めた。

 小川さんはいったい、どのようにして今回の作品を生み出したのだろう。また、彼は競技クイズの奥深さをどう捉えているのか? (全2回の1回目/2回目に続く)

※本記事では『君のクイズ』のストーリーの重要な部分に触れています。ネタバレが気になる方はご注意ください。

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小川哲さん ©釜谷洋史/文藝春秋

◆◆◆

スピード感や緊張感を表現できる競技クイズは小説向きだった

――『君のクイズ』は競技クイズが題材になっています。小川さんはもともとクイズやクイズ番組がお好きだったのでしょうか。

小川哲さん(以下、小川) クイズ番組はあまり見てなかったですね。僕は普段、テレビをいっさい見ないので。「高校生クイズ」はたまに見てましたけど。

――ではなぜ、競技クイズを小説の題材に?

小川 僕、スポーツが好きで、学生時代にはサッカーをやっていたんですよ。だからサッカーとかスポーツの小説を書こうと考えたんですけど、身体の動きを言葉で表現するのは難しいし、魅力を伝えづらい。

 でも競技クイズなら、スポーツが本来持っているスピード感や緊張感を小説で表現できると思いました。テレビとか動画ではクイズプレーヤーの早押しや知識力が別次元に見えるけど、実はルールや状況に応じて解答ボタンの押し方を変えながら戦っている。それがすごく面白いんです。

 それに小説内で問題文と解答を全部書けば、読者も一緒にクイズを楽しめて「競技クイズの世界は自分と無関係ではない」と自分のことのように感じられますよね。だから小説という媒体にすごく向いてるんじゃないか、と考えました。

――いつから構想していたのですか。

小川 クイズを小説にしたいと言い始めたのは、4~5年くらい前です。でも実際に書き始めたのは、今年の2~3月くらいかな。4月が締め切りだったので、年明けから準備し始めて、初稿の執筆は1か月くらいで書き終えました。そのあと細かく直したりはしたのですが。短編小説を書く勢いのまま走り切った感じです。