ふたりの強力なクイズプレーヤーが執筆に協力
――小説内ではいろいろなジャンルのクイズが出てきます。どうやって問題を作ったのでしょう。
小川 仕事でクイズプレーヤーの徳久倫康くんと知り合って。あと、「高校生クイズ」で伊沢拓司くんと一緒に優勝した、田村正資くんというクイズプレーヤーが大学の後輩なんですよ。徳久くんと田村くんとは、気軽にいろいろ聞ける関係性だったので、ふたりに協力してもらいながら書いていきました。クイズ的におかしな部分があれば、ふたりが全部教えてくれるんです。だからすごく心強かった。
それに、徳久くんには途中まで問題作成も手伝ってもらったんですよ。例えば僕が、「ウーロン茶に関係するクイズを作りたい」と言ったら、彼はすぐに5問くらい用意してくれるんです。それぞれの問題の確定ポイントとかも全部教えてくれる。
しかも、クイズプレーヤーがどう考えて問題に答えているのかまで説明してくれるから、本当に勉強になりましたね。
“ゼロ文字押し正答”のアイデアはどのようにして生まれたのか
――今回の作品は、“衝撃のゼロ文字押し正答”からストーリーが展開していきます。このアイデアはご自身で考えたのですか。
小川 そうです。ゼロ文字押し正答は、書く前からぼんやりと考えていました。クイズプレーヤーにとって一番のロマンは多分、問題文が読まれる前に正答することだな、と思ったので。
クイズに興味がない人にとっても、すごくわかりやすい謎じゃないですか。僕はクイズの話を書きたかったけど、クイズを知らない人にも読んでほしかった。だから、そういう人たちにどうやってこの本を手に取ってもらおうかと考えたとき、ゼロ文字押し正答が一番インパクトを与えられると思ったんです。
――ちなみに、ゼロ文字押し正答をした本庄絆と、主人公の三島玲央は、徳久さんや田村さんがモデルなんですか?
小川 そういうわけじゃないですね。本庄にも三島にも、特定のモデルはいなくて。
――そうだったんですね。以前、文春オンラインで田村さんにインタビューしたとき、「正答したときの『ピンポンピンポーン!』という音の気持ちよさが忘れられない」と話していました。それと同じような内容が小説内にあったので、てっきり……。
小川 田村くんのそのエピソードは僕も知っていますよ。彼や徳久くんから話を聞いているなかで、「クイズの一番の魅力は『ピンポン!』という音だな」と感じていて。それをこの作品の“拠り所”にしようというのは、執筆前に固めたことなんですよね。そういう意味では、田村くんの話が小説の原型になった、と言えるのかもしれません。