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「素人でもクイズ王に勝てる可能性がある」“競技クイズのリアル”を描いたSF作家・小川哲がそう考える納得の理由

『君のクイズ』小川哲さんインタビュー #2

genre : エンタメ, 読書

「競技クイズ」を題材にした作家・小川哲さんの小説『君のクイズ』(朝日新聞出版)が、2022年10月7日に刊行された。作家の伊坂幸太郎氏やテレビプロデューサーの佐久間宣行氏らが絶賛の声を寄せる本作は、クイズプレーヤーの思考と世界を体験できる“知的興奮エンターテインメント作品”になっている。

 取材中、小川さんはクイズプレーヤーの博識ぶりを「羨ましい」と表現した。いったいそれはなぜなのか。そして、彼が考える“知識を得ること”の重要性とは——。(全2回の2回目/1回目から続く)

※本記事では『君のクイズ』のストーリーの重要な部分に触れています。ネタバレが気になる方はご注意ください。

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小川哲さん ©釜谷洋史/文藝春秋

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クイズプレーヤーは「女性にモテるんじゃないかな」

――『君のクイズ』の執筆を進めるなかで、「クイズプレーヤーのすごさ」みたいなものは感じましたか?

小川哲さん(以下、小川) クイズプレーヤーは、自分が全然興味のないことに関しても、クイズによく出てくるからという理由で覚えていたりするんですよ。最初は単純に、それが驚きでした。

 例えば、今回の作品で全面的に協力してくれたクイズプレーヤーの徳久倫康くんは、僕がどんな内容の話をしても、そしてそれが僕の趣味やプライベートなことであっても、1回はラリーを返してくれるんですよね。すごいと思いますし、ちょっと羨ましかった。

『君のクイズ』でも書いているように、それができれば女性にモテるんじゃないかなと(笑)。女性だけじゃなく、誰と会っても楽しくコミュニケーションが取れる。僕はそういうのが「いいな」と思いました。

――たしかに、話題が尽きないから話していて楽しそうですね。

小川 徳久くんって、現代の若者のカルチャーとかに全然興味がないんです。でも多分、いま流行ってるアーティストの名前や曲について、僕の100億倍は詳しいんですよね。僕なんか、ひとりも知らないですから。

 そうすると、例えば高校生と話をしていて「〇〇の△△という曲が好き」と言われたときに、徳久くんなら「××の主題歌になっている、あの曲ね」と返せるわけです。でも僕の場合は、「そんな人いるんだ」とか言ってしまうから、高校生に「えっ、そんなのも知らないの。オジサン」と思われて終わってしまう。高校生が年配の人にかわったとしても、それは同じです。