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――知識があれば、コミュニケーションの取り方が変わってくる。

小川 コミュニケーションを取れる相手、コミュニケーションを取れる可能性が広がるというのは、知識があることの良い面ですね。

――ご自身は昔、よく百科事典を読んでいたそうですね。知識が増えていくこと自体はお好きなんですか。

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小川 どちらかというと、知識そのものにはそこまで興味がないんですよ。それよりも、小学生の頃から物事の成り立ちとか仕組み、物理法則みたいなものに興味があって。だから競技クイズに関しても、競技クイズの知識よりクイズプレーヤーの思考とか、競技クイズ界の成り立ちとかを知りたいんです。

――「仕組みが好き」という部分はご自身の小説の書き方にも反映されているのでしょうか。

小川 そうかもしれないですね。小説を書きながらも、「小説の仕組みを知りたいな」と考えているし。そもそも僕がSF小説からデビューしたのは、仕組みや物理法則が好きだから。SFというジャンルは、一番自由に仕組みについて考えられるんです。

物事を知れば知るほど、自分の考えが思い込みだと気付く

――今回の小説は「知的興奮エンターテインメント」と評判になっています。ご自身としては、「知識を得ることの重要性」をどのように考えていますか。

小川 物事を知れば知るほど、わからないことがわかる。つまり、「自分は世の中の何がわかっていないのか」がわかるんですよね。それが「知ること」の重要性だと思いますし、『君のクイズ』でも書きたかったことのひとつですね。

 僕は昔から、「自分が勝手にわかったつもりになっていた」と感じる場面が結構あって。例えば、すごく単一でシンプルだと思っていたものが、知識を得ることによって、実はすごく奥深くて複雑だったことがわかったり。対人関係でも、「この人はこういう人だ」と思っていたのに、心の内面を少し知ると、そんなに単純じゃなくて、いろいろな考え方を持っている人だとわかったりとか。

 小説を書いてるときも、自分の考えが思い込みだと気付いて、自分の足場だと思っていたものが消える瞬間がすごく好きなんですよね。世界が広がる感じがする。

――知識を得ることで、世界の見方が変わり、捉え方も変わってくる、と。

小川 そうですね。自分が気付かないうちに持ってた偏見や思い込みが見えてくる。一方で、知識を得ることで、今までわかってたと思ってたことがわからなくなることもあるんです。