1ページ目から読む
3/3ページ目

アスターが「ブラックジョーク」と強調しても…

 本作はボーが不安や恐怖に、理不尽なほど襲われる心の旅の映画であるが、その滑稽ともいえる姿を見つめることに戸惑いを感じる。なんせ3時間もあるのだ。ボーにはまだ理解しがたい悪夢と呪いもついて回る。笑えてしまうシーンもあるが、本作はやはりアスターがブラックジョークと強調しても、哀れな男が心を蝕まれる様子を観察する、後味の悪さが口に残る。

© 2023 Mommy Knows Best LLC, UAAP LLC and IPR.VC Fund II KY. All Rights Reserved.

INTRODUCTION
A24とともに『へレディタリー/継承』(18年)、『ミッドサマー』(19年)の2作でこれまでとまったく違う恐怖映画を作り、一躍注目を浴びるようになったアリ・アスター監督。待望の新作もA24とタッグを組み『ジョーカー』(19年)でアカデミー賞主演男優賞を受賞したホアキン・フェニックスを主演に迎えた。不条理と思われるストーリーが、上映時間約3時間の間に次々と繰り広げられ、先の展開を予想できない。アスター監督の底知れない才能を感じさせ、すでにマーティン・スコセッシやポン・ジュノ、ギレルモ・デル・トロなどがこぞって絶賛をしている。

STORY
ボーは、いつも不安に怯えている。近所の不良の振る舞いや、うがい薬をちょっと飲んでしまったことなどにビクビクし、悪夢のような日々を過ごしている。ある日母が怪死していると連絡を受けアパートを飛び出すと、世界は激変していた…。なかなか実家にたどり着くことができないボーは、地図に載っていない道を旅しながら、今までの人生が転覆してしまうような体験をする。

ADVERTISEMENT

STAFF & CAST
監督:アリ・アスター/出演:ホアキン・フェニックス、スティーブン・マッキンリー・ヘンダーソン、エイミー・ライアン、ネイサン・レイン/2023年/アメリカ/179分/配給:ハピネットファントム・スタジオ/2月16日公開