そして「光る君へ」の時代には、藤原氏のライバルはもうほとんどいなくなっていました。だから登場人物には、姓は省略されていても「藤原さん」が山ほどいます。では、争いのない平穏な時代だったのかというと、そうではなかったんです。
実際はドロドロの権力闘争であふれかえっていた
藤原氏には南家、北家、式家、京家の4つがあったんですが、この時代に力を持つのは北家。道長は言うまでもなく、紫式部もその北家の家系の1人ですが、この北家の中でドロドロの権力闘争が展開されるんです。武士が割り込んでこないから戦はありませんが、やり口は陰険になります。ウラから手を回してハメたり、ぬれぎぬを着せたり、当時は信じられていた呪いをかけたり……。
「鎌倉殿の13人」(2022年)で、平家を滅ぼした後に仲間だった御家人同士が殺し合いを始めたのとよく似ていて、親兄弟や親戚同士が関白や摂政の座を争い、道長も紫式部もそこに巻き込まれていくんです。
「セックスとバイオレンスの大河ドラマ」
過去の時代劇ドラマでは、貴族は男らしくてカッコいい武士たちとは正反対で、なよっとしてオシロイ塗った顔に歯は真っ黒、丸い眉毛が2つあってオホホホと笑う、という描写が多かったですね。
けれども、実際はかなりの乱暴者ぞろいだったそうです。「セックスとバイオレンスの大河ドラマ」というNHKの触れ込み通り、いいとこのボンボンたちが徒党を組んでの暴力沙汰、刃傷沙汰がしょっちゅうあった。昔々の太陽族とか暴走族、平成ならチーマー、今で言えば半グレみたいなヤカラのイメージでしょうか。権力闘争に絡んでいきなり人の生首がゴロンと出てくるようなシーンもあるはずです。
ボクは大河ドラマが好きで好きで、日本の歴史はすべて大河ドラマのストーリーで記憶しています。今まで扱ったことのない時代の新しい大河ドラマを、今年1年の間じっくり楽しみたいですね。
タレント
大学生の頃、バイト先のTV局で片岡鶴太郎に認められ芸能界入りし、斬新な生体模写で一躍有名に。ビートたけし、半沢直樹、“1人アウトレイジ”、阪神・掛布雅之、故野村克也監督など多彩なレパートリーを誇り、バラエティ、ドラマ、ラジオなどで活躍中。筋金入りの阪神タイガースファン。芸能界きっての歴史通であり、YouTubeで日本史全般を網羅する『松村邦洋のタメにならないチャンネル』を開設。特にNHKの歴代「大河ドラマ」とそれにまつわる知識が豊富。著書に『松村邦洋まさかの「光る君へ」を語る』『松村邦洋今度は「どうする家康」を語る』『松村邦洋「鎌倉殿の13人」を語る』がある。