2024年のNHK大河ドラマ「光る君へ」はどのような作品なのか。芸能界きっての歴史通で『松村邦洋まさかの「光る君へ」を語る』(プレジデント社)の著者でもある松村邦洋さんは「これまでの時代劇ドラマでは、平安時代は『オシロイを塗った貴族がオホホと笑う』ような華やかな描写がなされてきたが、『光る君へ』は違う。セックスとバイオレンスにまみれたドロドロな権力闘争が描かれる作品だ」という――。
「韓流時代劇みたいな大河を」
いよいよですね、NHKの大河ドラマ「光る君へ」。主人公は吉高由里子さん演じる紫式部。今から1000年も前、平安時代に書き上げた大長編小説『源氏物語』1本で、世界の文学の歴史に名を残した大作家です。大河ドラマで女性の主人公といえば、もっぱら武将や偉い人の妻やきょうだい、娘でしたから、貴族の女性というのは初めてですね。
原作・脚本は大石静さん。「セカンドバージン」(2010年、NHK)をはじめとした大ヒット作を持つラブストーリーの第一人者です。大河ドラマでは、過去に「功名が辻」(2006年)を手がけてますね。今回、NHKは大石さんに「平安時代を韓流時代劇みたいに料理できないか」と持ち掛けたそうですから、「光る君へ」は平安貴族の豪華絢爛(けんらん)な恋愛絵巻というところでしょうか。
1963(昭和38)年に始まった大河ドラマの中で、一番古い時代を扱ったのは平将門が主人公の「風と雲と虹と」(1976年)。小学3年の時に初めて見たボクは、主演の加藤剛さんのカッコよさにすっかりハマって、それ以降のほぼすべての大河ドラマを観ています。今、ボクがやっているNHKラジオ「DJ日本史」やYouTube「松村邦洋のタメにならないチャンネル」の原点です。
その将門が関東で天慶の乱を起こし、新皇を名乗ったのが西暦939年。「光る君へ」はそれから60年か70年くらい後、西暦1000年前後のお話なんです。大河ドラマ史上2番目に古い、しかもこれまでに取り上げたことのない時代の作品ですね。源氏と平家が争う時代は、そこからまた200年近く後の平安末期です。