『平安貴族サバイバル』『女子大で『源氏物語』を読む』などの著作があり、平安文学をとりわけ〈性と権力〉に着目して読み解かれてきた木村朗子さん。新年スタートの大河ドラマ『光る君へ』へのスタートを前に、このたび、『紫式部と男たち』(文春新書)が刊行された。『源氏物語』はいかにして書かれ、読まれたのか。紫式部と同時代を生きた男たちの実像を通じてその歴史を描き出すダイナミックな一冊だ。
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――『源氏物語』の物語世界と、『源氏物語』が描かれた平安宮廷社会とを行き来しながら『源氏物語』の書かれた平安時代を立体的に描き出すような冴えわたった筆致で、読み応え満点の仕上がりですね。摂関政治という色好みが力をもった時代の複雑な面白さというものも、存分に書かれていると思いました。そこでは男たちの権力闘争と女性たちをめぐる性愛の関係が表裏一体になっています。まさに木村さんが長年書かれてきた〈性と権力〉という切り口そのものですよね。
木村 摂関政治の時代、面白いんですよね。男たちが表舞台では権力闘争をしていて、それを宮廷社会で繰り広げられる性愛が下支えしているわけです。そしてその世界は言ってみれば全部賭けですから、サバイバルには呪(まじな)いをする以外に方法がない。だからある意味ではフェアな競争になるわけです。生まれというものをも突破する。どんなに宮中で上に登りつめても子どもを持たずに終わる人もいるし、本当に恋愛を謳歌したいなら逆に中の位にあるほうが自由があって楽しく、恋愛による上昇もあり得る。それなのに政略結婚よりもリアルな恋愛をしたかったのだと描いている『源氏物語』は面白いんですよね。