ダウンタウンは街中のいろんなところから大麻の匂いがするし、私のような外国人が1人で出歩くのはかなり危険な場所だと思います。よく「日本の治安は良い」と言われていますが、アラスカに行くようになって痛感しました。
夫と一緒に歌舞伎町に行ったとき、「ここが日本の中では治安が悪いと言われているところなの? あまり怖くないね」と感心していましたね。
「日本では全然見かけない」“義家族”が感じたギャップとは?
――歌舞伎町のエピソードのように、トマさんやトマさんの家族が日本で感じたアラスカとの「ギャップ」を聞いたことはありますか?
れな たとえばアラスカを含めたアメリカは、よく自宅やお店に国旗を飾るけど、日本だと全然見かけないとか。アラスカの街にはゴミ箱がたくさん置かれているけど、日本の街は少ないとか。そういった細かいギャップはたくさんあるそうです。
でも、アメリカには多様なバックグラウンドの人がたくさんいるから、違いを感じても気にはならないみたいですね。国や言語、宗教が違う人たちが集まれば、ギャップがあることが当たり前だから。
――日本とアラスカでギャップはもちろんあるけれど、その違いを受け入れて「家族」になる。そんなれなさんとトマさん、そしてトマさんの家族の温かい姿が、『アラスカワイルドファミリー』の人気の理由なのかもしれませんね。
れな クマや気候の話など、アラスカならではのエピソードを「面白い」と言ってくれる読者も多いのですが、それと同じくらい「国境を超えた家族の話にウルっとした」という反響もあって、すごく嬉しいですね。
「飼っている豚を解体した」相変わらずワイルドな義父
――最近のトマさんや家族の話を聞かせていただけますか?
れな 夫は日本で会社を立ち上げて、デザイナーとして頑張っています。お義母さんは最近Airbnbの運営を始めて、忙しくしているみたい。お義父さんからは、最近メールが届きましたね。「飼っている豚を解体した」って写真付きで。相変わらずワイルドな方です(笑)。
――マンガを出版したことで、れなさんご自身に変化はありましたか。
れな 子どもの頃からマンガを出すのが夢だったので、それが叶ったのはすごく嬉しかったです。トークショーや展示会にもたくさんの方に来ていただいて。
多分今の私を物語にたとえると、子どもの頃からの夢が叶って「ハッピーエンド」の状態だと思うんです。でも現実はこれからも続いていくから、これからもマンガを描き続けるのか、別のことを始めるのか、どうしようか悩んでいるところです。
ただ、ありがたいことに最近アラスカの美術館が私の漫画に興味を持ってくださって、一緒に何らかの企画をしたいというお話をいただいたので、とりあえずはそこに注力したいです。まだどのような形になるかは確定していませんが、日本人の視点からみたアラスカの姿を、現地の人にも楽しんでもらえたらいいなと思っています。