日本の最難関東京大学――近年は、テレビ番組「東大王」(TBS系)などの人気で、個性的な学生たちに注目が集まっている。その東大に学生・院生として人生の半分、18年間通い続けている男がいる。

 自らを長期在学者と称し、一貫して教えられる立場にあり続けるのはなぜか、話を聞いた。(全2回の1回目/続きを読む)

“東大18年生”の高原智史さん(36)

就活では官公庁を目指したが……

――高原さんは、そもそもなぜ東大に入ったのでしょうか?

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高原 高校生の頃から官僚になり公(おおやけ)のために働きたいという気持ちがあったからです。そのためには東大法学部に入り、国家公務員試験を受けるという漠然とした考えがありました。

 小さい頃から歴史好きで、最初は戦国時代でしたが、高校で明治時代が好きになって、明治時代を描いた作品などを読むようになりました。私は乃木希典が好きなので、乃木を悪く書いている司馬遼太郎さんの『坂の上の雲』は半分くらいしか読んでいませんが(笑)。

 

 明治の人たちが好きで、国を動かす官僚ってかっこいいなと。それなら東大法学部に行くのが、一番話が早いだろうと考えたわけです。結果的にその見立ては大外れするわけですが――。

――中高は私立に通われたということですが、ご両親が教育熱心だった?

高原 特にそういうわけでもなくて、両親は大学を出ていません。母は短大卒、父は工業高校卒です。やっぱり、東大には親御さんが官僚で、自分も、という人が結構多いのですが、うちは全然そうじゃなかった。

 親が、大学がどういうものかあまり分かっていないフシがあるから、今の状況が許されている部分もあります。ただ父からは、「さすがにあと1年もしたら、金がもたないぞ」「働け」としょっちゅう言われていますね。学費はざっと700万円ほどでしょうか。その上、生活費もかかっているので、両親には感謝しかありません。

――小さい時から試験は得意だったそうですね。

高原 ええ、幸い東大文Ⅰにストレートで入学でき、筆記試験は簡単にパスするのですが、大学4年時の最初の就活では第1志望だった総務省はおろか、第2、第3志望の省庁にも受かりませんでした。筆記はパスしても「官庁訪問」という面接がことごとくうまくいかなかった。