「学士入学」を利用して法学部を3回卒業
――それが、18年間におよぶ東大生生活の始まりですね。
高原 そうです。まず私は、院に行く前に学部生として法学部を3回卒業しました。
――え? 3回ですか?
高原 ええ。先ほどお話ししたように、4年生の時に目指していた官僚になれなかった。ここで普通なら「就職留年」をする人が多いのですが、私はたまたま「学士入学」という制度があることを知ったんです。1度卒業して、「学士」号を持っていれば、センター試験(現・大学入学共通テスト)や2次試験を受験することなく、東大に再度入学できる制度です。
学士入学には「本学士入学」と「他学士入学」がある。「本学士」とは東大法学部から再度東大法学部に入り直すこと。「他学士」は、東大の他学部や他大学から東大法学部に入るものを指す。東大では文学部や医学部、農学部などでも同様の制度が設けられている。なお、高原さんによると法学部以外では「本学士」「他学士」などの使い分けはあまりされていないという。
――あまり、利用する東大生はいなそうな気がしますが……。
高原 そうなんです(笑)。普通は東大を卒業すれば、どこかに就職できますからね。「本学士」は最短1年で卒業できるので、1年留年するのと変わらない。ただ留年するのではなく、東大にいても知らない人が多いこの制度を使って、大学に入り直したら面白いんじゃないかと、当時は軽い気持ちでしたが、これが迷走の始まりでした……。
――試験はあるのですか。
高原 筆記試験と面接があります。だけど、本学士入学に関してはある程度成績が良ければ試験は免除。私は半分くらい「優」(上から二番目の評価)と「優上」(最高評価)があったので、試験は免除でした。
――成績優秀ですね。
高原 ただ、東大法学部5年生の時は自分の都合で官庁訪問へは行けず、卒業のタイミングになってしまった。それで、また法学部に入り直しました。