ということで、欧州人は「腐っても」EU的な理念を堅持するのか、それとも巧緻な理屈に彩られた自国中心主義に舵を切るのか、あるいは……という歴史の転換点の直前が、おそらく今なのである。見守るしかない。
デモもマジメなドイツ人。「美学」に反すると共感もされない
と、今回は「政治的乱世」を感じさせる渋い話ではあるが、一点だけ、例のドイツ農家のトラクター軍団デモが「適切な手続に則り、整然と行われた」点は強調しておきたい。
それゆえに(環境活動家の過激アピール等と異なり)世間的な支持と共感を呼んだという面もある。まあ中には悪ノリして、進入してはいけないアウトバーン本線にトラクターを進入させたり道路に土を撒いたりした参加者も居たようだが、結果的に大目に見てもらえる範囲だったらしい。このへんのマジメさ、機微はドイツならではといえる。
デモ文化が薄くなったせいか、いまの日本の報道ではこういった点についての言及や留意が少ないが、デモにも「ルールと美学と仁義」というものがあり、基本的にそのルールを守ることがギャラリーの共感度につながる。
そもそもドイツでは学校でデモ活動の権利と実践について教え、生徒たちが皆でプラカードを作り、州の教育予算カットに反対するデモにクラス全員で参加する、という話は私も幾度か述べてきた。
そこで「権利」だけでなくデモのマナー面についても教えているのが実は大きい。ゆえに、たとえば迷惑系YouTuberじみた環境活動家の過激パフォーマンスは「デモンストレーション」ではなく「テロ」の一種として認識されるのだ。このへんの峻別基準の明確さはけっこう重要だったり。
とはいえ、愛すべき隣国フランスにおけるデモ文化は、もっと熱く激しく無軌道な「祭り」であり、よくクルマがひっくり返ったり炎上したりしているのだが……まあ、見なかったことにしておこう(笑)。