ロシアのウクライナ侵攻で、国際的な評価を最も下げた国がロシア自身なことは間違いない。では2位はどの国か……と考えるとドイツの名前が浮上してくる。
侵攻が始まった2日後にウクライナに5000個のヘルメットを送ると発表して「失望した」「ひどい裏切り」と非難されたかと思えば、ゼレンスキー大統領はドイツ下院で「あなた方はまたしても『壁』の向こう側にいる」とお叱りの演説。さらにはドイツのシュタインマイヤー大統領のキーウ訪問が、ウクライナ側から“断られる”事態まで発生した。
「職業はドイツ人」と名乗りドイツの公共放送の日本地域プロデューサーであり、ミステリーや日本アニメを愛するオタクでもあるマライ・メントラインさん。4月に2年半ぶりにドイツで2週間過ごす中で、日本とドイツではウクライナ侵攻への態度に大きな温度差があることに気がついたという。
ドイツはなぜ叱られ続けているのか、国内からの反発はないのか、そして「ナチス」という言葉が飛び交うことについて当のドイツ人たちはどう思っているのだろうか――。
◆◆◆
――日本ではウクライナ報道が徐々に減りつつありますが、ドイツはいかがですか?
マライ ドイツにとってはウクライナもロシアも“ご近所さん”なので、今でも毎日のように報道が続いています。ただ侵攻直後の「ロシアを徹底的に叩くんだ!」という雰囲気は一段落して、ドイツにとってベストな戦争の終わらせ方を考える人が増えているように感じました。
「徹底的にロシアをやっつけようという雰囲気はない」
――どういうことでしょう?
マライ たとえば「ロシアをどのくらい弱体化させるのがいいか」という点が議論されています。日本は割と「ロシアには徹底的に弱体化してもらいたい」という空気が強いですよね。
――そう思います。
マライ その日本の感覚はアメリカの希望に沿ったものだと思うんですけど、ドイツ人の中で、ロシアが無くなればいいとか、何もできないくらい弱体化してほしいと思っている人はほとんどいません。侵攻前の境界線くらいまでロシアを押し返す必要はあるけれど、そこからさらに徹底的にロシアをやっつけようという雰囲気はないんです。