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――ロシアに強烈な制裁を、という声は大きくないのですか?

マライ この戦争の悪役はどう見てもロシアで、その感覚はドイツでも同じです。ただ、ウクライナやロシアはやっぱり近すぎるんですよ。国内に多くのウクライナ人やロシア人が住んでるし、知り合いもいる。歴史的な関係性も深い。だからウクライナはウクライナのまま、ロシアもロシアのままで存続するのが落ち着くというか、そのバランスを大きく変えることに抵抗がある人が多いんだと思います。

ウクライナでは現在も戦闘が続いている ©Getty Images

――ロシアから天然ガスを輸入しているなど、経済的な結びつきが強いことも影響しているんでしょうか?

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マライ 影響はあると思います。1991年にソ連が崩壊して以来、ドイツの基本的なロシア対策は「経済的にも人的にも交流してお互いズブズブに依存しちゃえば戦争も起きないよね」というものでした。実際に交流を強めて、天然ガスをロシアから運ぶパイプラインも作って、相互依存をどんどん深めてきました。2000年代までは、その方法で結構うまくいっているように見えていたんです。結果的にその見通しは甘かったわけですが……。

変わり果てた我が家を後にする住民 撮影・宮嶋茂樹

ドイツ人は「アメリカへの依存度をこれ以上高めたくない」と思っている

――現在も天然ガスの輸入が続いていることについて、ドイツ人はどんな反応なのでしょう?

マライ ガソリンの値段がものすごく上がっているので、天然ガスが無くなるのも困るというのが正直なところだと思います。ロシアにお金が流れるのは困るけどドイツ国民の生活を犠牲にすることもできない、というか。中東から石油を輸入する準備をしたり4月にショルツ首相が来日して川崎で水素ステーションを視察したり、ロシアの天然ガスに依存しない方法を模索してはいますが、すぐに輸入を打ち切るのは難しいのが本音でしょうね。

――日本は中東の石油の割合が多くてロシアの資源の割合は低いのですが、ドイツはロシアへの依存度が高いですよね。

マライ ドイツ人は「アメリカへの依存度をこれ以上高めず、ヨーロッパはヨーロッパでやっていきたい」という気持ちが強くて、そこが日本とは大きく違います。ロシアからのガス輸入を増やしていたのも、アメリカの影響力が強い中東の石油に頼りたくなかったから、という部分が大きいんです。今回はそれが裏目に出た形ですね。