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松島 ライオンに噛まれてすぐヒョウに噛まれて帰ってきたって、そりゃおもしろいでしょう(笑)。自分だって他人事なら、きっと世間話で何か言っていたと思います。私が笑えるようになるまでは時間がかかりましたが、人がお笑いになるぶんには自由です。

骨が砕ける音が聞こえ…「死んだ!」

――ドキュメンタリー番組の撮影でケニアを訪れて、最初にライオンに噛まれました。狩猟監視官ジョージ・アダムソン氏と一緒にライオンの群れに接触したときのアクシデントだったそうですね。

松島 そうそう。ジョージがメスのライオンたちにラクダの肉をあげるところを見ていました。エサやりが終わり、ライオンたちが眠るのを「猫みたいな格好で寝るんだな」と眺めていたら、何か後ろから音がする。振り向いたらスタスタスタとライオンが近づいてきていて、アッと思ったときには頭を噛まれていたようです。

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 ヘルメットを被っていたのは不幸中の幸いでしたが、そこに爪か何かを引っ掛けて、群れの真ん中まで引きずられました。ひっくり返った私にライオンたちがじゃれつき、体中が傷だらけに。でも近くに病院なんてない奥地ですから一晩待つしかなくて、朝日が昇ってからドクターヘリでケニアの町中のほうまで運ばれました。10日入院しなさいと言われましたが、3日で退院してロケに戻りました。

――ライオンに噛まれた時点でロケ中止とはならなかったんですか? 撮影が続いたことに驚きです。

松島 その通りですよね(笑)。でもアフリカ大陸の奥地に行くとなると、移動に30時間以上もかかる上に、黄熱病やマラリアを予防するための薬やら注射やらが必要で、準備だけでも1か月かかるんです。

 私はロケ初日にライオンに襲われたものですから、それで帰国するとなると、せっかくの特別番組の撮れ高が全くなくなるわけです。友人たちには「だとしても帰国するでしょう。バカじゃないの」とは言われましたけどね。でも次はヒョウに噛まれると知っていたら、いくら私だって日本に帰っていましたよ。

――ライオンも大事故でしたが、ヒョウに噛まれたときは九死に一生だったそうですね。

「なぜ助かったのか、いまだに謎」©三宅史郎/文藝春秋

松島 なぜ私が助かったのか、いまだに謎です。ロケに戻り、ジョージの後継者的存在であるトニー・フィッツジョンと、彼のテントでテレビスタッフたちと一緒に夕飯を食べました。テントの周りは高いフェンスで囲われていましたが、ヒョウは木に登るか何かして、フェンスの中に侵入していたんです。気づけば私の目の前にヒョウがうずくまっていて、視線が合いました。

 ヒョウの瞳孔がキュッと閉じるのを見て、「私を襲う気だ!」と理解した次の瞬間に噛みつかれ、ガリガリッと骨が砕ける音がしました。この時ばかりは、「死んだ!」と思いました。本当に視界が真っ白になるんですよ。

 診断の結果、第四頚椎粉砕骨折とのことでした。お医者さんは、「もしあと1ミリでも位置がズレていたら、全身マヒになっていたか、死んでいたか」ですって。だからライオンはもう平気だけど、ヒョウは今でも怖いですね。

――なんとも壮絶な……。