映画『ゴールデンカムイ』が大ヒットしている。
1月19日に公開されると、わずか17日間で観客動員数111万人、興行収入16.3億円を突破。おそらく今後もロングランとなり、マンガの実写映画史にその名を刻む作品となるのではないだろうか。(記念すべき作品を「映画館で観た!」と言うために、ぜひ今のうちに映画館に行ってほしい!)
なぜ映画『ゴールデンカムイ』は、「人気マンガの映像化」というプレッシャーをはねのけ、まごうことなき傑作になったのか。その背景には、本作を「ダイジェスト映画」にしなかったという英断が潜んでいる。成功を収めた最大の理由は、原作の完成度をそのまま丁寧に映画に移し替えたことにあった。
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全31巻の大長編ストーリーを2時間の映画に
『週刊ヤングジャンプ』で2014年から2022年にかけて連載されたマンガ『ゴールデンカムイ』(野田サトル/集英社)は、日露戦争後の北海道を舞台にした、元陸軍兵の杉元佐一とアイヌの少女・アシリパ(リは小文字)の「金塊探し」の物語。全31巻にわたる長編ストーリーである。
その長さをかけるに値するほど、『ゴールデンカムイ』の展開の密度は濃い。とくに後半訪れるクライマックスには「そこでこう来るか!」と息をのんだ読者も多いはずだ。
実写化は「無理じゃない?」と…
そんな『ゴールデンカムイ』を実写映画にするという。第一報を耳にした時、正直、筆者は不安に思った。「あの長い物語を、2時間の実写映画にする……? 無理じゃない?」と苦笑したのだ。
長編マンガの『ゴールデンカムイ』をもし2時間の映画にするならば、どう考えても「ダイジェスト版」にならざるを得ないからだ。
「ダイジェスト版」とはどういうことか。メディアミックス作品を見てきた方ならば、一度は「ああ、あれね」と苦笑してもらえるのではないか。
つまり作品の主要な展開は変えていないし、キャラクターや重要な台詞は登場しているものの、どうしても素早く次の展開に向かってしまうので、物語のカタルシスが薄く「ただあらすじを解説しているだけ」に見えてしまう――そんな失敗例のことだ。