性的指向も、性自認も、服装の嗜好も、自由であるということが、こんなにもドラマで描かれる時代がやってきた。
『広辞苑』が第七版ではじめて「LGBT」(レズビアン、ゲイ、バイセクシャル、トランスジェンダー)について掲載したものの、その解説が十分でなく、ただちに追記が発表されたのは今年1月のことだ。むしろ、その一件によって、LGBTが「性的指向が異性愛でない人々や、性自認が誕生時に付与された性別と異なる人々」であることが広く認知されたのではないだろうか。岩波書店のホームページのお知らせ欄に「LGBT」に関する修正が掲載された際、合わせて「しまなみ海道」に関する間違いも訂正されていたが、「しまなみ海道」よりも「LGBT」の理解のほうが断然浸透したと思う。
偶然なのか何なのか、この出来事と時を同じくして、1月~3月に放送されたテレビドラマには「LGBT」の人物が多く登場していた。
「となかぞ」の脚本家が語ったLGBT
まず、『女子的生活』(NHK)は、男性ではあるが、女装をし、好きになるのは女性というトランスジェンダーが主人公(志尊淳)のドラマだった。
『弟の夫』(NHK)は主人公(佐藤隆太)の弟(佐藤二役)がゲイで、彼が亡くなったのち、同性婚していたパートナー(把瑠都)が主人公を訪ねて来る。
『隣の家族は青く見える』(フジテレビ)は主人公の隣人にゲイのパートナー(眞島秀和、北村匠海)がいて、「わたさく」と視聴者に呼ばれ人気を得た。
『隣の家族は~』では、台本で「LGBT」のみならず「LGBTQ」(Qは性的指向や性自認が定まってない)という言葉も書いていた脚本家・中谷まゆみは、「Yahoo!ニュース 個人」で筆者がインタビューした際、「(彼女がゲイの物語をすでに書いていた00年代初頭では)まだ、物語の中だけのファンタジー的な存在に捉えられていたと思います。でも今は世界的にLGBTへの偏見をなくしていこうという動きがあったり、カミングアウトする著名人も増え、現実のこととして受け入れる人も増えましたよね。特に若い人は、海外ドラマや映画等を通して、当たり前のことだと認識しはじめている人が多いように感じてますが、ある年齢層から上の人の意識はほとんど変わってないような気がします」と、ドラマを見て「見たくない」と感じた視聴者もいたことを明かしたほどで、世間でなかなか理解されないLGBTに関して、どのドラマも、彼らがじょじょに、家族や周囲の人々に理解されていく物語となっていた。これらのドラマをすべて見た視聴者は、トランスジェンダーは「性自認が誕生時に付与された性別と異なる人々」であり、ゲイは「性的指向が異性愛でない人々」である、その違いがわかったことだろう。