姉に結婚式の参列を断られ…
「姉は30歳を過ぎてからもずっと実家にいたので、何気なく『そろそろ1人で生活すれば?』と言ったことがあったんです。すると、普段は寡黙な姉が急に声を荒らげて、『お前に私の気持ちなんかわからない!』と叫び、号泣してしまって……」
その出来事を境に、両者の間にはさらに深い亀裂が入ってしまった。翔子さんは29歳の時に結婚したが、結婚式も気まずいものになったという。
「結婚式には出席してほしい、と姉に声をかけましたが断られました。夫からは『深刻な事情があるの?』と心配され、最終的には理解してくれたのでよかったのですが、下手したら破談になりかねないかもしれないと怖かったですね。
その後、私は娘を授かり、夫は2人目も望んでいるんですが、自分たちのようにきょうだいの関係が悪くなってしまったら……と考えると、躊躇してしまいます」
遺産の分割が原因で不仲に
東北地方に住む50代の公務員・熊田剛臣さん(仮名)は、6年ほど前に父親の遺産をめぐって兄と疎遠になってしまったという。
「遺産相続でモメました。兄は進学も就職も地元で、結婚してからもずっと実家で、両親と暮らしていました。私は東京の大学に進学する時に家を出て、Uターンして地元に就職してからも別に部屋を借りていましたし、結婚後には家を買っています。とはいえ同じ市内だし、兄とは盆や正月に顔を合わせる程度の付き合いがありました」
母親もすでに亡くなっていたため、父親の遺産は兄弟で分割することになった。そこで問題になったのが不動産の扱いだ。
「兄は、自分は土地の現物を相続して、私には相当分の現金を渡す代償分割にしたがりました。私はそれでもよかったのですが、兄は一向に現金を準備しようとせず、おかしいなと。
後になって土地の評価額が明らかに低く見積もられていたり、父の口座残高が減っていることに気づき、不信感が募ってしまいました。そこからはお互い感情的になってしまい、話し合いにならなかった」
最終的に熊田さんも弁護士を立てることでなんとか決着させたが、それ以降、交流は一切ないという。
「両親が生きていた頃は『兄弟仲良くするんだよ』と、ことあるごとに言われてきましたが、2人とも亡くなってしまったので、もう兄とは無理に付き合わなくてもいいかな、と思っています。これ以上関係がこじれても気まずくなる一方なので……」
血を分けたきょうだいだからこそ抱く、複雑な思い。一朝一夕に解決できる問題ではないだけに、たった一つの出来事が2人の関係性を大きく左右してしまうのかもしれない。