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「100分の1くらいでしょ」BiSHがなくなったら自分は…? モモコグミカンパニーが父親、そしてプロデューサー・渡辺淳之介から言われた“意外な言葉”

『解散ノート』より#3

source : ノンフィクション出版

genre : エンタメ, 芸能, 音楽, 読書

note

 多くのファンに惜しまれながらも、2023年6月29日をもって解散したガールズグループ、BiSH。メンバーの一人であるモモコグミカンパニーは、「解散宣告」から東京ドームで行われたラストライブまでの3年半の日々を、リアルタイムで書き記していた。

 ここでは、その赤裸々な記録を一冊にまとめたドキュメンタリーエッセイ『解散ノート』より一部を抜粋。解散後の身の振り方に悩む彼女が、自身の父親とプロデューサーの渡辺淳之介からかけられた“意外な言葉”を紹介する。そして、改めて辿り着いた“一番大切なもの”とは――。(全3回の3回目/最初から読む

モモコグミカンパニーさん ©鈴木七絵/文藝春秋

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「100分の1くらいでしょ」

2019年12月22日

 今日は父親と久しぶりに会い、一緒に喫茶店に行く予定になっていた。店に着き、コーヒーを飲みながら色んな話をする中、自然とBiSHの話題になっていく。私は、さりげなく聞いてみる。

「もし、BiSHがなくなって、私が一人になったら、どのくらいの人が付いてきてくれると思う? 一人になったらどのくらいの力があると思う?」

 両親には、解散のことは黙っていた。変に心配もかけたくないし、誰かに話されてしまうリスクもある。

「100分の1くらいでしょ」

 父はそう答えた。

 BiSHのことをいつも褒めてくれて、活動も応援してくれている父からさらっとこんな残酷な言葉が出てきたことに私はびっくりして、血の気が引いていくと同時に、吹き出しそうになった。

 BiSHは売れてるかもしれないけどお前はちっぽけだ。そう言われた気がした。だけど、自分でもそんなことは分かっていた。

 分かっていたはずなのに、私は少なからずショックを受けていた。BiSHが上手くいってても、調子に乗らないようにと心掛けていたのに。

 BiSHの中にいて、毎日のようにいい風を受けていると、やっぱりグループと私を切り離して自分単体のことを上手く客観視できていなかったようだ。私に限らず、グループにいながら自分を客観視することはみんな難しいのかもしれない。

 モモコグミカンパニーには一体何があるのだろう。

 明日は、渡辺さんとメンバー一人ひとりの個人面談の日だ。この日までにそれぞれ考えをまとめてきてほしいということだった。だけど正直、まだ私の考えはまとまっていなかった。“私は今後、これでいきます”と言えるものは見つからなかった。

 芸能界に残るのか、WACKに残るのか、そんなことだって定かではない。

 未来は誰にも分からないし、確実なものもない。自分の考えですら数日後には変わってしまうかもしれないのに、結論なんて今出せるものか、というのが私の正直な気持ちだった。しかし、生きていくためには自分の足で立ち、進んでいく道を決めて、歩いていくしかない。

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