入浴中、頭に精液をかけられたり、便所の水に浸かったメシを食わされることも……かつて特殊詐欺で懲役5年4ヶ月を言い渡されたフナイム氏。彼が塀の中で見た壮絶なイジメの数々とは?

 フナイム氏による反省と警告の書『闇バイトで人生詰んだ。~元特殊詐欺主犯からの警告~』(かざひの文庫)より一部抜粋してお届けする。(全2回の1回目/後編を読む)

刑務所で行われる「壮絶なイジメ」の数々とは……。(写真はイメージ) ©getty

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刑務所のいじめ事情

 受刑中、刑務所内では様々な事件が起きた。工場での作業中、急に受刑者同士の殴り合いの喧嘩が始まったことが何度もあった、刑務官が「作業やめ! 全員目を閉じろ」と大声で叫ぶ。薄目で目の前を見ていると、警備隊と呼ばれる刑務所の警備担当が何人もバタバタと走ってきて、「何してんだお前ら!」「おい! 目を閉じとけ!」と命令という名の罵声が工場内に轟く。

「てめえ絶対ゆるさねえからな!」「ぶっ殺す!」などの受刑者の息の上がった声が耳に入ってくる。目を開けたくても開けられない……。目を開けたら規則違反で自分も連れていかれるから。喧嘩をしていた受刑者が警備隊に連行されると、何事もなかったかのように作業が始まる。いや、始めなくてはならないというほうが自然かもしれない。

 とにかく喧嘩の話は刑務所内では絶えることはなかった。喧嘩事案を起こし懲罰を受けて工場に配役された受刑者が、どんな喧嘩をしたのか話をしてくれるからだ。

 入浴の最中、頭を洗っていた時に他の受刑者から精液を頭部にかけられて、大浴場で大喧嘩になったという受刑者や、グラウンドでの運動時間中、以前同じ工場で今は他の工場にいる因縁のある受刑者を発見、その受刑者のもとめがけて突進し大喧嘩を起こした受刑者もいた。

 これは聞いた話だが、刑務作終了後の余暇時間、独房は鍵も開いていて出入り自由な時間帯。因縁のある受刑者の独房に訪問して、部屋にあったブラウン管テレビを持ち上げ、頭に向かって画面部分を振り降ろし、大けがをさせたという事件もあったそうだ。

 いじめもよく起きていた。ただ標的にされる受刑者は社会とは少し違うような気がする。社会でいじめの標的となる人は気弱そうな人間だったり、何の罪もないような人だったりするケースが多いように散見されるが、刑務所内でのいじめの対象は、人の信用を裏切るようなことをした受刑者や、食べ方が汚い人間、集団行動ができずいつも迷惑ばかりかける受刑者、体臭がする、生意気、嘘つき、そして罪名がピンクと呼ばれる性犯罪受刑者、子供への犯罪をした受刑者が標的になることが多い。