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「恥ずかしいこともたくさん書いてある」――モモコグミカンパニーが『解散ノート』に綴った本当の気持ち

source : 別冊文藝春秋 2024年3月号

genre : エンタメ, 芸能, 音楽, 読書, ライフスタイル

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解散後もずっと怖がっている

――数行で終わっている日もあれば、エッセイのように長く書かれている日もあります。ご自身の心の状態が、文章の長さや温度感にそのまま表れているのかなと感じました。

モモコ 短いときは、今にも泣きそうで書きたくても書けない、という状態でした。解散後の活動について、渡辺さんと何度も個人面談をしていたのですが、辛辣に現実を突きつけられることも多くて……。今振り返れば“愛の鞭(むち)”だったと分かるのですが(笑)、かなり追い込まれていた日もありましたね。

 解散のことは、発表まで両親にも言っていなかったんです。心配をかけたくなかったし、今後どうするかを明確に決められていないのに、胸を張って「解散します!」なんて言う勇気もなくて。でもあるとき、父親に「BiSHがなくなって、私が一人になったら、どのくらいの人が付いてきてくれると思う?」ってさりげなく聞いてみたんですよ。そうしたら、「100分の1くらいでしょ」ってさらっと言われちゃって。表面上はなんともないフリをしたけれど、ショックでしたし、ずどーんって深く心に刺さりましたね。そのときの気持ちも、しっかりノートに書き留めました。

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「一体誰に相談したらいいんだろう?」と、気持ちの持って行き場がない状態が続いているときなんかにも、『解散ノート』の存在は拠り所というか、言葉を通じて自分の意志確認をする、自問自答の場所になっていました。このノートには本当にお世話になりましたね(笑)。

――ラストの、解散ライブである東京ドーム公演の記述は圧巻でした。書けることがたくさんあるなかで、あえて書きすぎないように意識されたのかなとも感じました。

モモコ ラストライブのことを書く分量は特に意識しませんでしたが、私個人としてのBiSHの終わりを書こうと思いました。私の見た東京ドームの景色は、5万5000分の1に過ぎません。あの日について滔々(とうとう)と語ろうとか、BiSH全員の気持ちを代弁しようとかは全く思いませんでした。

 公演が終わった瞬間、「やり切った」と明確に思えたのは、“解散宣告”から3年半、自分の感情から逃げることなく、向き合い続けたからだと思っています。

©文藝春秋

――モモコさんが悩んだり苦しんだりする等身大の姿は、BiSHを知らない人が読んでも共感でき、勇気付けられると思います。

モモコ 私は一見、ステージというきらきらした場所にいて、ファンもいて、好きなことを仕事にしていて、悩みなんてないように見えるかもしれません。でも、全くそんなことはないんです。ずっと怖がっているし、解散後だって不安を感じています。今の時代、“安定”なんてどこにもないし、これからどうしたらいいのか、誰も教えてくれないですよね。立派に見える大人だって、私のように自分の仕事や将来のことに迷っているのかもしれない。そんな不安を抱えている人々の気持ちに、この作品が少しでも寄り添うことができたらいいなと思っています。