大統領慣れしてきたトランプ
ここで興味深いのは第四のパターンによる更迭・辞任が増えているという点である。トランプ政権発足後は、論功行賞として十分な「身体検査」もせず、政権内のバランスも考えずにスタッフを配置したことでスタッフ間の対立が絶えず、ホワイトハウスが機能不全の状態であったが、ケリーが首席補佐官として就任し、ホワイトハウスの中に規律を持ち込んだことである程度政権が機能するようになってきた(ただし、ホワイトハウスのスタッフは経験が浅く、政治的意識の低いトランプ選対から持ち上がった人が多く、就業中にウォッカを飲んで乱痴気騒ぎをするなどの問題を起こしている)。
また、「大人たち(grown-ups)」と呼ばれるマティス国防長官、マクマスター安保担当大統領補佐官、ティラーソン国務長官(頭文字を取って「MMT」とも言われる)やコーン経済担当補佐官による政策調整がなされることで、とりわけ外交政策が安定したと評価されてきた。
しかし、3月に入って第四のパターンが増えているという事実は、これらの「政策的に反対する人たち」を排除して、自らが進めようとする政策を実現するために必要なスタッフを集める必要性にようやくトランプ大統領も気がつき始めたのではないか、ということを示唆する。大統領が持つ権限は、大統領令を乱発したり、ツイッターで国民を煽ったりするのではなく、知識やノウハウを持った人間を周りに集めなければ意味がないという点を理解するようになったのではないか。
これまでは忠誠を誓う人々を集めようとしてきた
これまでトランプ大統領は、自らに忠誠を誓う人々を集めることで政権運営を安定させようとしてきたが、マクマスターのように忠誠心が高い人物であっても、政策的に噛み合わなければスタッフとして用いることが難しい。
そのため、ポンペオCIA長官を国務長官に、CIAの在任期間が長く、イラク戦争後に問題となったブラックサイト(拷問のための秘密施設)の運営にも関わるなど、CIAの表も裏も知り尽くすハスペルをCIA長官とした。また、FOXニュースチャンネルのコメンテーターとしても知られ、北朝鮮への先制攻撃を合法であると主張し、イラン核合意を破棄するだけでなく、イランの体制転換への青写真も描いている、国務省の元官僚で米国の官僚制度を熟知しているボルトン元国連大使を安保担当補佐官に任命したのであろう。
こうした「大統領らしさ」を身につけてきたトランプ大統領の当面の問題は、2018年11月の中間選挙で勝利し、上下両院で共和党多数を維持するだけでなく、上院で60票を獲得することでフィリバスター(議事進行妨害)ができない状況を作ることである。