中間選挙は「大統領らしさ」を身につけたトランプ大統領の信任投票
アラバマ州の上院補選やペンシルベニア第18選挙区の下院補選でいずれも共和党候補が敗北しており、このままでは中間選挙が厳しいという状況はトランプ大統領も強く認識している。それ故、3月2日には鉄鋼・アルミに関する関税引き上げを宣言し、韓国の鉄鋼の輸出3割自主規制といったWTOのルールを無視したような米韓FTA見直し合意をまとめ、史上初の米朝首脳会談を5月に開催することで、過去の大統領にはできなかったことを実現するというアピールをしたいのであろうと思われる。
果たして自分の政策を実現することが中間選挙にプラスになるのか、それとも保護主義的な政策によって小売業などの損害が大きくなり、それがマイナスに働くのか。米朝首脳会談が不調に終わり、むしろポンペオやボルトンが主導する外交政策がより一層アメリカの安全を脅かすような結果になった場合どうなるのか、といった疑問は尽きない。
それでも今度の中間選挙は、まさに「大統領らしさ」を身につけたトランプ大統領の信任投票のような様相を呈することになるだろう。ここでの敗北は、トランプ大統領の残りの任期の足かせになる可能性も高く、議会との調整が一層困難になれば政策の実現は難しいままとなるだろう(ただし、「トランプ政権にとって、2018年は『ひどい1年』か『最悪の1年』か」でも述べたとおり、1期目の中間選挙は現職大統領に不利になるケースが多い)。
タカ派重用で武力行使への圧力は……
また、ポンペオやボルトンといったタカ派を重用した方針は米国内外に大きな波紋を呼んでいる。一方で金正恩との首脳会談を準備しつつ、北朝鮮に対する先制攻撃を主張する人物を外交安保の重要ポストに起用するのはやや理解に苦しむが、少なくともティラーソン国務長官やマクマスター安保担当補佐官といった「大人の」対応をしている限り、北朝鮮に対する圧力にはならないという判断だと思われる。
ポンペオやボルトンを任命したことが即座に北朝鮮との戦争を意味することにはならないが、それでも首脳会談が決裂した際には武力行使への圧力がホワイトハウスの中から高まることは確かだろう。
日本から見れば、米朝首脳会談が成功し、アメリカが自らの利益だけを考えて北朝鮮の核保有を事実上認めた上で大陸間弾道弾(ICBM)の開発の中止だけで制裁解除の見返りを与えるというシナリオは望ましくないが、逆に米朝首脳会談が決裂し、米国内での武力行使への圧力が高まって、戦争のリスクが高まることも望ましくない。日本にとって望ましい交渉結果をいかにして引き出すのかを話し合う4月の日米首脳会談は、今後の日本を巡る安全保障の分岐点になる重要性を孕むものとなるだろう。