トランプ政権を巡る動きがめまぐるしくなっている。

 3月13日には国務長官であるティラーソンを解任し、後任にCIA長官のポンペオを指名した(CIA長官の後任には副長官のハスペルを指名)。また、3月22日には安全保障担当補佐官であり、国家安全保障会議(NSC)の事務局長であるマクマスターを更迭し、後任にブッシュ(ジュニア)政権の国連大使であり、保守強硬派であるボルトンを就任させることを発表。

 さらに3月28日には、公費での出張なのに観光旅行をするなどのスキャンダルが発覚した退役軍人省の長官であるシュルキンを更迭し、ホワイトハウスの主治医であるジャクソンを指名した。

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3月13日に解任されたティラーソン元国務長官(駐インド米国大使館サイトより)

主要米メディアは、辞任したトランプ政権の辞任リストを作っている

 このように1ヶ月の間に立て続けに3人の閣僚を更迭し、さらには環境保護長官だが温暖化否定論者であるプルイットにもスキャンダルが発覚し、トランプ大統領に更迭されるのではないかとの憶測が流れている

 それ以外にも、住宅都市開発(HUD)長官のカーソン(2016年大統領選挙でトランプと争ったが、後にトランプ支持に回って長官のポストを得た)や内務長官のジンキに執務室の家具を公費で購入しようとしたスキャンダルが発覚している。既に同様のスキャンダルで保健長官のプライスが更迭されており、まだ閣僚人事の動きはあるのではないかと見られている。

 このようなめまぐるしいトランプ政権の人事交代は、トランプ就任以降とどまることなく続いている。安保担当補佐官のフリンがロシアゲート疑惑に関連して更迭されたのをはじめとして、FBI長官のコミーや、大統領のイデオロギー的支柱だったバノン首席戦略官、首席補佐官だったプリーバス、自由貿易派であった経済担当補佐官のコーンなど枚挙にいとまがない(主要メディアは辞任したスタッフのリストを作っている。CNNABCなどを参照)。

首席戦略官を務めたバノン ©getty

スタッフ更迭の4パターン

 これまでのトランプ政権における閣僚人事交代は大きく分けると4つのパターンに分けることができる。

 第一に、世論の圧力が強まり、トランプが擁護出来なくなった、ないしは擁護するほど重要でないと考える人事である。3月に解任されたシュルキン退役軍人長官やプライス保健長官はまさにそのパターンであり、家庭内暴力がメディアに取り沙汰された秘書室長のポーターもこの中に入ると言える。

 こうしたスキャンダルによる人事交代は今後も引き続き行われると思われるが、ここで鍵になるのはトランプとの距離であり、大統領にとって重要でない人物はより更迭されるリスクが大きい。その点で元女優の夫人とセレブ感溢れるライフスタイルを送るムニューシン財務長官は世間の風当たりが強いが、即座に退陣という声が出てくる訳ではない。

トランプ大統領と娘婿のクシュナー(右) ©getty

対立を収めるための辞任

 第二のパターンは、閣内の権力争いの結果、対立を収めるために辞任させる流れである。

 この代表格が首席戦略官を務めたバノンだった。バノンはトランプが最も信頼する娘婿であるクシュナー補佐官や娘であるイヴァンカと対立し、また首席補佐官のケリーとの対立もあった。そのケリーの前任であるプリーバス首席補佐官も、同様にホワイトハウス内の対立関係を収めきれず辞任することとなった。

 またバノンと立場が近く、タカ派の主張を繰り返していたゴルカ副補佐官やホワイトハウス広報部長のスカラムッチなども、閣内の権力闘争に敗れて去ることになったといえるだろう。スカラムッチはNew Yorker誌の記事でプリーバス首席補佐官を「パラノイアな精神分裂症」などと罵り、ホワイトハウスからのリークを撲滅するとして次々とスタッフの首を切ったことでプリーバスと対立し、ケリーが首席補佐官になった瞬間にクビとなった。