5月に予定されるトランプ大統領と金正恩朝鮮労働党委員長の米朝首脳会談があと1カ月余りまで迫ってきた。「ロケットマン」、「老いぼれ」などと子供じみた中傷合戦を繰り返してきた両首脳だが、果たしてどんな会談になるのか。トランプ独自の話法や交渉術を解説した『ドナルド・トランプ 黒の説得術』を著したジャーナリスト・浅川芳裕氏が会談を「言葉」から読み解く。

得意技「フレーミング」で金正恩を縛り付け

 3月26日、米朝首脳会談に先立ち、習近平主席と金正恩氏の中朝首脳会談が行われた。

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電撃的に行われた中朝首脳会談 ©getty

 トランプ大統領は中朝会談について、28日、ツイッターでこう触れた。

「昨日の夜、中国の習近平主席から、金正恩氏との会談が非常にうまく行き、金正恩氏が私との会談を待っているとのメッセージを受け取った」

 続けてトランプは「長年、多くの政権を経て、朝鮮半島の平和と非核化は少しの可能性さえないとみんな言っていた。これから金正恩は彼の人民にとって人類にとって正しいことをする絶好の機会だ。会談を楽しみにしている」とツイートした。

 トランプ話法の特徴がよく出ているツイートだ。まず、金正恩のとるべき行動について、トランプの得意技である「フレーミング」を施している。フレーミングとは影響を与えたい相手に対して自分が設計した思考の鋳型にはめてしまうコミュニケーション技術だ。トランプは会談時の金正恩のあるべき姿を「人類にとって正しいことをする」ものとして位置付けたのだ。

 これは仮にうまくいかなかったときの逃げにもなる。会談の成否は「金正恩次第」というわけだ。

 もう一つの得意術「多数輪唱」も使っている。「みんな言っていた」とそれが自明の真実であるかのように断定することで、自分のおかげで、平和と非核化の可能性が出てきていることをほのめかしている。