人に対して指摘しにくく、また人から指摘されれば確実に傷付く――。

 良好な人間関係を無残にも打ち砕く「口臭」。

 色々な要因によって発生するこの不快な臭気は、当人が気を付ける以外に防ぐ手立てはないのだが、自分の出す臭いに対して、多くの人は鈍感だ。どうすれば気付くことができるのか――。

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 鏡に向かって「ベーッ!」とやってほしい。

 舌の表面が「うっすらと白っぽく見えるピンク色」でなければ要注意。「舌苔(ぜったい)」という“臭いの素”がまとわりついている可能性があるのだ。

卵が腐ったような悪臭を放つ物質

 一口に「口臭」といっても、種類は様々。

 歯や義歯の汚れ、歯周病などの歯茎の異常、唾液の分泌量の低下、扁桃腺炎や副鼻腔炎など耳鼻咽喉科領域の疾患、飲食物やタバコの影響などの他、実際には大した臭いが出ているわけでもないのに、「自分の口は臭い」と思い込んでしまう「精神的な口臭」というのもある。

歯科医師の簗瀬武史氏

 そんな中で、口臭の原因として最も多いのが舌苔だ。

「舌苔とは、舌の表面、特に舌の中央部から奥のほうに多く付着する粘り気のある物質。口の中の粘膜から剥がれ落ちた細胞や、食べ物のカス、白血球などの血液成分や細菌によって構成され、揮発性硫黄化合物という、卵が腐ったような悪臭を放つ物質を発生させます」

 と語るのは、神奈川歯科大学客員教授で埼玉県朝霞市にあるヤナセ歯科医院院長の簗瀬武史歯科医師。

ニョロニョロたちの表面に沿ってへばり付く

 指先で触るとわかるが、舌の表面は真っ平ではない。「ムーミン」に出てくる「ニョロニョロ」のような突起が無数に寄り集まってできている。

 このニョロニョロは正式には「糸状乳頭」といって、これがニョロニョロと動くことで、舌の上の食べ物を自在に動かすことができるのだ。

 そして、よく見ると糸状乳頭の中に赤くて丸い粒が点在しているはずだ。これは「茸状乳頭」といって、ここには味を感じる「味蕾(みらい)」がある。

正式には「糸状乳頭」と呼ばれるニョロニョロ ©iStock.com

 舌苔は、こうしたニョロニョロたちの表面に沿ってへばり付き、次第に厚みを増していく。

 口臭として認識できる頃には、「ベーッ!」と出した舌の表面が真っ白になり、さらに舌苔の堆積が進むと、緑色だったり、薄茶色だったり、黄金色だったり、見た目に臭気を連想させる色合いを呈していく。